第六章 全国ネット! 初めての漫才!! (10)
「え?マネージャーって、角田さんでしょう!?」
「本当はね。でも、美歌ちゃんの方が大事だから代役で紺野さんに頼み込んだって。時給千二百円で」
「千二百円!?」
奈々子は本当に声が裏返った。
苦労芸人の奈々子がアルバイトをしていた時給よりも遥かに高い金額である。
普通、こんな高級の時給取りはいない。それこそ、ピンクカラーの世界に突入しないといけない世界だ。
「よく吹っかけましたね、紺野さん」
「関西人の為せる業ね」
二人は心底静香を感心していた。
しかし、こんな茶番な話に華を咲かせる余裕もない現実もある。
「ところで瑠伊さん。圭介との漫才はどうなっているんですか?」
あと一週間後に控えている、本番の漫才の件を持ち出した。
瑠伊はココアを飲んでいた。
「うん... ... ... そのことなんだけど」
「けど!?」
カップを机に置き、瑠伊は考えた。
考えた挙げ句、
「全然、決めてない」
答えは最新のコンピューターよりも早く導かれた。
「それって、全然駄目じゃないですか!」
奈々子も気が抜けた声で叫ぶ。
「だって、本番前に模試があるんだよ。まずはそっちに万全を尽くさないといけないでしょう。よく諺にあるよね、『二兎追う者は一兎をも得ず』ってさ」
苦しい言い訳を展開をする。
「それにね、漫才の台本を書いてるの相沢君だよ。まかせてくださいとか言っちゃってるから相当な自信があるんだろうけど、私には全然手渡されてもいないんだよ」
瑠伊は立て続けに言い切った。
聞いている奈々子は軽蔑の眼差しだった。
ジトーーーと。
瑠伊には堪えられない辛さだった。




