第六章 全国ネット! 初めての漫才!!⑼
そして、三週間が過ぎた。
強引すぎるが、とにかく三週間が過ぎたのだ。
カリカリカリ... ... ... カリカリカリ。
カリカリカリ、カリカリカリ... ... ... 。
この懐かしく思える音は鉛筆の音。
こんな音を鳴らす人物といえば瑠伊しかいない。
数学の問題集をひたすら解いている瑠伊の両脇にも現国や古典や英語などの問題集が山積みになっていた。
耳には雑音すら入る隙もないようにヘッドホンを装着している。
だから、
「瑠伊さん、ココア飲みませんか」
奈々子が久々のオフで部屋へ遊びにきても耳に聞こえないから振り向くことがない。
奈々子がわざわざココアを運んできてようやく、
「あ。ありがとう、ナナちゃん」
奈々子の存在に気が付く有様だ。
瑠伊はヘッドホンを外し受験勉強を中断した。
「どう?一人でやってて、暇なんじゃないの!?最近、司会の仕事ばかりと角田さんから聞くけど」
瑠伊はお笑い雑誌に釘付けの奈々子に聞いた。
「そうでもないですよ。他の人達の漫才見て勉強してますから」
「そう、そうよね。朝倉さんに早く復活してもらってコンビで舞台が立てる日が来るといいね」
「はい。瑠伊さんに言われると何だかほっとするから不思議。今では同じ芸人なのに」
奈々子は呟いた。
「芸人!?違うよ、誤解しないで。今回もパパのせいでやるんだから」
瑠伊は慌てて訂正したが、
「本当ですかぁ〜!?そのわりには結構気持ちよさそうに映ってますよ、写真」
奈々子は瑠伊に雑誌を見せた。
三週間前にインタビューされた相沢との特集であった。
急に顔が真っ赤になった。
「瑠伊さん美人だからなぁ〜。この記事を読むよりも写真で男性のファンがつくんじゃないですか!?」
奈々子はからかう。
「もう!本当は眼鏡かけてたのに紺野さんが強引に取り上げたんだから」
瑠伊は頬を膨らませていた。




