第六章 全国ネット! 初めての漫才!! ⑺
「え?」
相沢はピンと来なかった。
何がどうなっているんですか!?
クエスチョンマークが浮かんでいた。
「鈍いわねー、仕方ないから今回はコンビ組んであげると言ってるのよ」
「え?今、なんて!?」
更にマークの数が一気に十個は増えた。
瑠伊はクエスチョンマークを吹き飛ばす台詞を吐き散らした。
「漫才、してあげると言ってるの!」
聞いた瞬間、目が点になった。
記憶の一部も吹き飛んだ。
だが、すぐに復活した。
「本気ですか!?これは夢じゃないでしょうね!!」
「馬鹿言わないで、ほら!行くわよ」
瑠伊と二人で玄関に行き、内村達が押さえている記者達の目の前に立った。
当然、会見の事も後のパーティーの事も記憶にない。
あるのは瑠伊とコンビを組めたという達成感であった。
これで彼の人生を全て使いきったという意味も頷けるであろう。
相沢は床に寝転んだ。
体を大の字にして空を見上げていた。
「何をしているの?」
「し、篠原先輩!?」
相沢を見下ろす瑠伊に驚いていた。
瑠伊は制服姿であった。
「んしょ、と」
瑠伊も腰を下ろした。
「ねぇ、学校行かないの!?」
第一声。
続けて、
「驚くだろうなぁー。先生も皆。本当は受験でそれどころじゃないけど息抜きなら丁度いいかもね」
相沢を見た。
相沢も起き上がった。
「篠原先輩」
「ん?」
「先輩は確か東大に合格するのが夢でしたよね」
「うん。合格して普通の生活をするの。相沢君のような将来という夢とは違うげどね」
「だったら、どうして引き受けてくれたのです!?」
「当然、騒ぎが大きくなりすぎたからよ」
瑠伊は速答した。
「本当は断りたい。でもね、すんなりと東大を卒業した後の人生設計が出来ていないのも事実なの」
今回は酒の助けもなく打ち明けた。
「だから出るのですか?」
「そうよ、悪い!?」
「い、いえ」
二人とも黙ってしまった。
「ところでさ、相沢君」
再び切り出したのは瑠伊であった。
「漫才のネタとか、出来てるの!?」
「まだですよ。こんな展開すら夢心地なんですから」
「だったら、本番までの一ヵ月で台本を仕上げてね」
立ち上がった。
「私、受験勉強で大変だから。ユメノ荘に来てから成績が落ち込んでいるんだから、挽回しなくちゃいけないし」
「え〜!!そりゃあ、ないっスよ」
相沢も立ち上がった。
「えーい!!うだうだ言わない!私を巻き込んだんだから、当然よ」
「そんなぁ〜、殺生な」
相沢の心境はこうだ。
お許しくださいませ〜、お代官様〜。
ま、こんなところであろう。
だが、それを聞き入れては貰えない。
瑠伊は腕時計を見て叫んだ。
「もう、九時!?嘘!?完全に遅刻してる!!完全にアウトだよ!!」
「マジっスか、先輩!!」
さすがに相沢も慌てて自室に戻ろうと瑠伊よりも先に廊下を走っていた時だった。
「ちょい待ち、燃えるツッコミ」
引き止めたのは静香であった。




