第六章 全国ネット! 初めての漫才!! ⑹
吠え続けて数十時間。
物干し台に降り立った相沢圭介は、未だに内秘めた嬉しさを噛み締めていた。
目に隈が出来ていようと、目に見える物体が二重に見えていようと、今の相沢には一切関係なかった。
「わずか一ヵ月程で先輩から返事を貰えるなんて、人生全ての運を使い果してしまった気がしてならない」
少々、オーバーすぎないか。
だが、今の彼にすればそうかもしれない。
そう。
事の始まりは瑠伊がくるみのバイト先のケーキ屋を出て寮に戻ってきた時に遡る。
瑠伊は奈々子と美歌の三人で寮の玄関にきた。
当然、待ち兼ねていたマスコミ連中は我よと先に瑠伊に押し掛けようとしたが、瑠伊はそれらを完全に無視して真っ先にリビングに姿を現したのだ。
「せ、先輩!?」
「何、素っ頓狂な声を出してるのよ。表の連中、静めにいくわよ」
瑠伊はぶっきら棒に相沢に言った。
反対に相沢も意を決して言った。
「今日のこと先輩に謝ります。いくら焦っていたとはいえ、先輩の意志を無視してました。どうもすいません!」
相沢は頭を下げた。
逆に瑠伊は目を丸くしていた。
「ちょ、ちょっと、今更誤っても遅いわ。それよりも玄関で騒いでいる連中を沈めるのが先決でしょう」
と、何故か顔を紅潮させていた。
「そうですね。もちろん今回の件は白紙ということですよね」
当然のように相沢は呟いたが、
「白紙!?なんで!?」
瑠伊が反対に聞き返した。
「なんでって... ... ... 僕は篠原先輩を無理矢理に引き込もうとしていたんですよ。騒ぎが大きくなったとはいえ、白紙に戻すのは当然でしょう!?」
瑠伊が立ち止まった。
クルリと後から詰め寄る相沢に振り向き、
「それは、まだこんな騒ぎになる前の事でしょう!?今更冗談でしたとか言えないじゃない!もう私達の存在は北海道から沖縄まで知れ渡っているのよ!!今回に関しては出ないと収拾もつかないのよ、もう」
人差し指で指して言い切った。




