第六章 全国ネット! 初めての漫才!! ⑶
ここはキッチンルーム。
この部屋にいる人物といえば自称『料理の哲人』と名乗っている佐伯くるみと思うだろう。
だが、この日の朝は少し違う。
散乱する、日本酒の一升瓶とビール缶。
それ以上に錯乱している、クラッカーの紙テープ。
まだ片付けていない、料理。
これだけでもパーティーをやりましたと主張しているものだが、そこで寝てしまった男女が二人いた。
紺野静香と内村輝彦である。
それぞれの手にはビール缶と一升瓶が握られている。
おそらく散乱する瓶も缶もこの二人が飲んだ分であろう。
「う、うーん... ... 」
まずは静香が重い瞼を擦りながら起き上がった。
うつらうつらとした意識の中で辺りを見渡した。
その目の前にメモ用紙があった。
無造作に静香は見た。
『気持ち良さそうに寝てますので先に渚の様子を見にいきます。佐伯より』
くるみの置き手紙であった。
次に時計を見る。
八時だ。
いつもなら当の昔に朝食が終わっている頃の時間である。
静香は置いてあった、まだジュースが残っているコップを持ち、洗い、水を汲んで飲んだ。
「あー。頭、痛ぁーーーっ」
今の静香の頭の中ではドラム缶が鳴り響いている。
当然、水を飲んだぐらいでは鳴り止まない喧しさである。
「しっかし、派手にやったなぁー、昨夜」
静香は錯乱しているキッチンルームを見渡した。
宴の見事な残骸の散らかり様を。
コップをテーブルに置き、内村の隣に腰を下ろした。
内村は相変わらず眠っている。
両腕の上に頭を乗せて。
「画伯もよく飲んだし、ウチも三日分は飲んだんとちゃうんか」
うっすらと笑みを浮かべた。
そこへ余所余所しく忍び寄る様にして入ってきた男がいた。
「何や、マネージャー」
静香が見逃すわけがない。
角田である。
「ああ、紺野さん。お早ようございます」
その挨拶をする声も小さい。
「何や?アイドルなら起こそうか!?」
対して静香の声は十倍は大きい。
慌てて角田の手が静香の口を塞いだ。
「声、大きいですよ」
「なんや、いきなり」
静香も声のトーンを落として角田に突っ掛かるが、
「ははぁ〜ん。さてはアイドルに聞かれたらまずい事か?」
目を細めてニヤニヤと意地悪な顔付きになる。
角田は声を詰まらせた。
静香の悪い虫がそれを見逃さない。
「やっぱり、そーか」
今にも笑いそうだ。




