第六章 全国ネット! 初めての漫才!! ⑵
さて同じ時刻の瑠伊の部屋では。
「うるさくて、全然勉強にならない」
一睡もしていない瑠伊が机に向かっていた。
目には隈が出来ている。
本当に眠れなかった証拠だ。
おまけに開いた問題集も全然手付かずの状態であった。
「本当に頭にくるけど、私自身にも問題があるかも」
瑠伊は昨日の一連の騒動を思い出した。
一太郎の事務所に呼び出され、事前連絡もなしに芸能人にされ、いきなりの会見まで開いてしまったのである。
ふぅー。
俯せになる。
何故か目は淋しそうな表情も見え隠れしている。
「... ... ... パパに呼び出された時は、やっと観念したかと思っていたけど。甘かったとしか言えないね」
ここで、ため息。
台詞は瑠伊らしい強気な台詞であるが、やはり自分の家が恋しいのだろうか。
いや、訂正をしよう。
「ナナちゃんと朝倉さんの二人についての事だけをパパに頼んだのに、あの馬鹿親父、勝手に人の写真を使って芸能雑誌に載せて、マスコミを利用してデビュー会見までさせるんだから!もう、後戻りも普通の生活も出来ないじゃない!!」
バン!
机を叩いた。
握り締めていた鉛筆も砕けた。
瑠伊は怒っていた。
しおらしいホームシックにかかる程、瑠伊は余裕が無かった。
ごく普通の受験生が味わうのには縁も所縁も、ましてゆとりもない次元での苛立ちである。その苛立ちをギリギリの一線で留めようと、今では珍しく新しい鉛筆を小刀で削りだした。
シュ、シュ、シュ。
何かに取り憑かれたように削る。
シュ、シュ、シュ。
なんとか冷静さを取り戻そうと削る。
十分後。
新しい鉛筆だったはずの物体は鰹節のように削られたままごみ箱の中にあった。
瑠伊は息を吐き出すと小刀を机の引き出しに戻した。
クルクルと、回転式の椅子を回しながら呟いた。
「でも、漫才はどうするんだろう... ... 」
そんな場合じゃないと分かっていても言い出した以上は気になるもの。
はぁー。
また息を吐き出した。




