第五章 現役女子高生、マスコミ登場!? ⑻
「ただいま〜」
「ああ。お帰り、相沢君」
相沢は一足早く寮に帰ってきた。
珍しくリビングでテレビを見ている内村に声をかけられてソファーに座った。
「何を見ているんです!?」
相沢は珍しい内村の行動を聞いた。
内村は丸縁の眼鏡をかけている。
「ちょっとした、美術鑑賞さ」
「ああ、なるほどね」
相沢はテレビを見た。
文字通り教育テレビの美術鑑賞だった。
ルネサンスとか、印象派とか、中学の授業やテストに出た専門用語が連呼する。
興味がなければ思い切り睡魔が襲ってくる。
相沢は立ち上がる。
「どこに行くんだい!?」
「コーラー、買いに」
相沢はロビーに設置している自動販売機からコーラーを買い、再びリビングに戻る。
コーラーを飲む相沢を見て、
「瑠伊ちゃんは納得したのかい!?」
いきなり話を切り出した。
顔は和やかな内村だが言う台詞はそれなりに真剣である。
「取りつく島もありませんでしたよ。僕が事務所にきた時は、もう物凄い剣幕で... ...何も言えなかった」
相沢は正直に言った。
内村は加えていた煙草を灰皿に置いた。
煙草の灰が灰皿に落ちる。
相沢もコーラーをテーブルに置いた。
「篠原先輩となら絶対に最高な漫才が出来るのに」
呟いた。
内村はテレビを消して、
「それは違うよ、相沢君」
相沢を見た。
内村は続けた。
「君が瑠伊ちゃんと漫才をしたいという気持ちの強さは、よく知っているつもりだよ。でも、その気持ちを瑠伊ちゃんにぶつけてしまったら駄目だ。瑠伊ちゃんでなくても断られるよ」
「僕の独り相撲とでも!?」
「うーん、そういう表現も出来るね。瑠伊ちゃんは今は東大合格を目標にしてて、とても君の夢に付き合ってられないのが現実だからね。おまけに実家は君も知っての通り、芸能事務所の社長令嬢だ。例え彼女の親が彼女の芸能人デビューを勧めていても、そう容易く彼女は受け入られるだろうか!?」
「難しい話ですね。少なくとも僕には理解が出来ません」
相沢は首を振った。
内村もそれに頷く。
「僕なら喜んでデビューしてしまいそうだから」
「だろうね。だけどね、親の名が知れているほど、その子供は辛くなるんだよ。親の七光とか様々な憶測で比べられたりして、いい加減に違う自分を見たくて逃げるものさ。僕のように」
そこで内村は眼鏡を外した。
そして芸能雑誌に目を向ける。
「まぁー、瑠伊ちゃんは強いからね。逃げも隠れもしないだろうけど、今は間違ってもデビューの出来る段階じゃないね」
瑠伊が載っているページを見て、
「へぇー。こうして見れば、瑠伊ちゃんも美歌ちゃんに負けないぐらいに美人だったんだねぇ〜」
等と、言った。




