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これが私の生きる道?!  作者: 今井 純志
41/83

第四章 ども、朝倉渚です。 ⑻

 これでようやく、

「なんだぁー、飲み物が欲しかったのか」

「あら、そうだったんだね」

 二人にも分かったようだ。

 静香としのぶは、一気に力の抜けた同じ台詞を言う。

「気付いてくださいよぉ〜」

「気付いてやってなぁー」

 言った途端に四人とも笑いだした。

「で?あそこで寝てるんは、燃えるツッコミやんか!?今日は受験生の追っ掛けをしなくてもええんかいな!?」

 縁側で熟睡中の相沢を指した。

 くるみと内村は、「さあ」と首を振る。

「相沢センパイ、今朝も昨夜もずぅーと、瑠伊センパイの鉄拳を食らってますよ」

 汗を拭き取っているしのぶが呆れ返ったように報告する。

「コンビ組む確率、ゼロやからなぁー。いつもの強引さでも首を縦に振らんからな、受験生は」

「そりゃあ、そうですよ。来年は東大受験なのにお笑いなんてやってられませんよ」

 と、持ち出していたカセットテープを巻き戻す。

「まだ、練習かい!?しのぶちゃん」

「はい、内村さん。お洗濯取り込む時間には早いし、せっかく学校も半日で終わったんですから」

 静香は軽く口笛を吹いた。

 くるみはパチンと手を合わせた。

「あ、そうそう。クッキー焼いたのよ、食べてからにしたら!?」

「いいえ、遠慮します」

 と、また立ち上がって音楽に合わせて軽いステップから踏み始めた。

「まあ、頑張り屋さんね」

 にこやかにくるみは笑った。

 内村は煙草を取り出して一服している。

「だけどなぁー、頑張るにしても節度がいるで。受験生もダンサーも肩に力が入りすぎとちゃうか。ウチやったら、ストレスでおかしくなっとるで」

 静香は小さいビンを買物袋から取り出した。

「あら?静香さん。パチンコ!?」

「そや。今日は新台入荷でな、玉の出がええんや」

 一口入れる。

「このスコッチも、あのジュースもそうなんや」

 と、二口目には飲み干してしまった。

「そーいや、漫才師から何か電話があったやろ!?」

「何がです」

 くるみはもう掃除を忘れていた。

 内村はイーゼルを折畳み、

「何でもテレビの仕事が来たとか言ってたよね」

 続いて他の画材も片付けていた。

「そうや、画伯。何だかんだといっても上手く夢に向かってるからな。羨ましいわ、ほんま」

 そこでくるみが割り込んだ。

「でもォーーー、奈々子ちゃんの相方って、私の友達ですよ」

 心配そうに警戒した。

 同時に静香と内村が止まった。

「で、でも、退院したと聞いたよ」

 内村が動揺する。

「う〜ん。それでも彼女の場合、当日にならないと... ...」

 くるみの言うことが正解である。

 奈々子の相方を知っている者であれば、それは常識といわざるをえない。

 だが静香が言い切った。

「大丈夫やって!いくらドジが多いからって、自分の人生棒に振る奴はおらん!もう去年みたいなこと、あらへんやろ」

 その張り上がった一言で、奈々子の話は打ち切った。

 しのぶは変わらすにダンスに夢中だ。

 相沢も寝返りを打っている。

 内村も何時の間にか、どこかへ姿を消していた。

「せやけど正直な話、焦るわな」

「どうしてですか、静香さん」

 浮かない顔で静香は話す。

「それぞれが確実に叶えてきてるやろ。近くで見ててウチ、焦ってるんや。そりゃあ、商売するのに経験も金もいるからな。時間も一番にかかるだろうけどな」

「うーん、難しい話ですね」

 ワンテンポ、遅らせて答える。

「そーやな。コックも焦ってるだろーし。どういった経過は知らんが、大きなチャンスが友達に来たんだしな。親友として応援するしかないわな」

「そうなりますかねぇー」

 くるみは曖昧な返事をした。

 顔色は一つも変えないのに、この時のくるみは持っていた箒を強く握っていた。

 静香は握っている手から細い血管が浮き出ていたのを、わざと見逃していた。

「ほな、部屋にいっとるで。夕飯には呼んでな」

 これだけ言い残して静香は寮へ入っていった。

 一方のくるみは、しのぶが踊り終わるまで箒を握ったまま突っ立っていた。

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