第三章 酔っても、グチっても.... .... ⑵
「瑠伊さん、起きてる?」
廊下側の襖から、声が聞こえた。
何となく語尾がだらけているが、それが奈々子であることに瑠伊は分かっていた。
「入ってきてもいいよ」
「そんじゃあ、お邪魔します」
奈々子が入ってきた。
片手に水の入ったバケツと雑巾を持って。 その用意のいい事に、
「あっ!そっか。昨日は何もしてないんだ。ただ、ベッドを組み立ててそのまま寝ちゃったんだっけ?!」
ようやく今の自室の状況に気付く。
段ボール箱が積み上げられているし部屋の天井は嫌な事に蜘蛛の巣がかかっていた。
おまけに窓際は埃がたまっている。
「というわけで、今日は朝食の前に掃除をしましょう」
奈々子は瑠伊に渡した。
「これで掃いてくださいね」
「なるほど」
渡された箒を見た。
続いて下を見た。
見えるのは畳である。元温泉旅館だからと奈々子の説明にもあったから納得が出来る。でも箒というのは謎で仕方なかった。
「掃除機の方が早いのに」
小さく呟くが、奈々子が畳にお茶の葉をばら蒔き始めた。今までがクローゼットの部屋でしか住んだことのない瑠伊には奇妙で首を傾げるしかない。
頭にクエスチョンマークが埋まっていく瑠伊に、
「こうしておくと畳の間にたまっている埃がお茶の葉にくっつくんですよ」
奈々子は生活の知恵を教えた。
瑠伊はただ感心するしかなく、これまた奈々子の指示に従って畳の目に沿って掃いていた。
瑠伊は思った。
「意外に何も知らなかったんだなぁー」
手際良く雑巾で窓を拭いていく奈々子を横目で見て小さく呟いた。
一時間後。
「これでいいかな」
奈々子は満足していた。
「当分、掃除はしたくない」
瑠伊は、完全に疲れていた。
その代わりに部屋は見違えるほどに綺麗になった。といえど部屋は八畳間の部屋が二つ続きである。本棚が二つあるがそれでも広く感じるのである。
「マンションと違って今まで出さなかった百科事典もようやく置けたし」
「へー、そうなんですか?」
「うん。滅多に開かないけどね」
二人で笑っていると横槍をいれるように電話が鳴った。
「誰だろ!?」
「きっとくるみさんですよ。もう朝食の時間ですから」
奈々子が取った。
二、三度だけ頷き、受話器を置いた。
「やっぱり、くるみさんでした。御飯が出来たんでいらっしゃいって。」
「はいはい。」
二人は、キッチンルームへ向かった。




