第二章 ようこそ! ユメノ荘へ ⑼
「は、はぁー。でも内村さん、画家やってて不安とかないんですか!?」
「不安!?現実を見れば色々とあるよ。僕は今年で二十八になるんだが、一般的な人達から比べれば劣っているだろうね。収入とか社会的な信用とかね」
顔の表情とは反対に聞こえる言葉だが、どれも的を射ている。
「でもね、僕は毎日がストレスや混乱になるような混沌としている社会の中に潜り込んでがむしゃらに生きるよりも今の時間を楽しく生きれたらいいと思うよ。それが自分の夢の為だとしても将来への幸せの為だとしても、その価値は変わらないんだよ」
「はぁー。でも私が受験生って、ナナちゃんから聞いたんですか?」
「今朝ね。東大を目指してるんだってね」
と、内村がにこやかに話していた直後だった。
バァアン!!
「「ひぃゃあ!!」」
奈々子と瑠伊、二人揃って叫んだ。
一方の内村は、
「あれ?パンクしたかな」
と、ブレーキを踏んで車を止めた。
大きな音がしたのに、ちっとも動じない。
反対に慣れているようだ。
止めた場所は大きなカーブを過ぎたコンビニの手前であった。
内村は、思い出した。
「スペアータイヤ、積んでなかった」
この瞬間、二人は愕然とした。
「なんで忘れるんですかぁー!?」
奈々子が叫んだ。
「いやぁー、洗車した時に荷物も片付けようとして、積むのを忘れたんだな。きっと」
「だったら、尚更じゃないですか」
「いやー、面目ない。とにかく降りてみようか」
三人揃って、車から降りる。
内村はパンクしたタイヤを見た。位置的には左の後だったのである意味ではいいのだが、
「こりゃあ、タイヤ交換だな」
パンクと思われたタイヤは見事に破裂していた。
奈々子は言った。
「瑠伊さん。先の将来の不安よりも今が不安ですよ」
「そ、そうね」
実に笑えない状況であった。
反対に内村は、
「なーに、スタンドが近くにあるからまずは外して持っていこう」
実に前向きであった。




