00 六級掃除屋
薄暗い迷宮の通路は寒く、床には汚水が溜まり、周囲には当然のように悪臭が漂う。足首を汚水に浸けながら通路を進むと、最奥には錆びた金属の扉があった。
「六級掃除屋イチ、指定位置に到着しました。掃討作業を開始します」
俺は懐から無骨な形の水晶を取り出して、それに声を掛ける。数秒もすると水晶からはザラザラとした音質での応答が返ってきた。
「はいはい〜こちら東部支部管理課。どうせ簡単な作業なんだから一々報告しなくて良いよ、ちゃっちゃか仕事してね」
管理課の通信担当者はとても面倒そうな態度で通信をブツ切りする。俺のような下っ端の仕事にはちっとも興味が無いのだろう。
「イヤな感じだ」
苛立ちをぶつけるように俺は錆びた扉を蹴り開けて突入した。今日も、ここでの仕事が始まる。
──俺の名前はイチ、職業は“掃除屋”だ。色々な物を掃除する仕事、単純だ。だからって作業が簡単な訳じゃない……掃除は常に危険と隣り合わせだ。
掃除屋は人類にとって邪魔なゴミを片付ける。そこに例外は無く倫理も無い。危険な害獣を自分の手で殺処分する事だって多い。だから掃除屋には高い殺戮能力と生存能力が必要だ。それに応じて階級も分けられる、一級から六級という具合に。
俺のような下っ端の六級掃除屋が受け持つ仕事はだいたいは居住区のゴミ掃除だが、それだと稼ぎが極端に少ない。
なので欲深い掃除屋はこうして未開の迷宮に潜って内部で繁殖してる“魔物”と戦うのだ。
扉の先で俺を待ち受けているのも、そういう魔物。人類にとってのデカい害獣だ。
「ゴミ掃除の時間だ」
今日もまた食い扶持を稼ぐための殺処分が始まる。




