24. まさかの!
本日2話目です。
お間違えのないように♡
キエラからの報告を受けて、驚きの余り絶句した私ですわ。
報告を受けたのは、レベネン商会に張り込ませていた密偵からのもの。念のため、アリアーヌ様のご実家であるポルテス男爵家の情報も集めてから学院に急ぎました。
まさかの事態に、思いの外時間が掛かったのですわ。
既に午後の授業は始まっていて、馬車寄せからの廊下も人影は少なく、私は足早に教室に向かいました。ちらりと確認した馬車寄せには、すでにエレン殿下の馬車もありましたから登校されているのでしょう。
教室のドアの前に立って、息を整えます。少し背伸びをしてから、ガラス窓から中をそっと伺ってみると……
あら、いないじゃないの?
エレン殿下の席が空いていますわ。学院には来ていても、教室で授業は受けていないの? どこにいるの?
「ここにいないとなると……あそこね」
私は姿勢を正すと、真っ直ぐにアノ場所に向かいます。
そうですわ。生徒会室に行きましょう。
「やあ、ヴィヴィ。今登校したの?」
いた。
ハインツ様とレイン様もいらっしゃるのね? この三人はいつも一緒に行動しているのかしら? そう言えば、エレン殿下の側近は、ジョイル様を含めて五人いたはずですけど。後の二人は見えませんわね。
私は室内を見廻して、ハインツ様に促されたままソファに腰を掛けました。エレン殿下もレイン様も一緒にローテーブルを囲むように座りました。
でも、諸々の事情を知っているハインツ様とレイン様だけで良かったですわ。大っぴらに話せる内容でも無いと思いますし。
「はい。少し気になる事がありましたので、今になってしまいましたわ。殿下や皆様には、元婚約者の見送りをして頂いてありがとうございます。今回の事では、皆様に大変ご迷惑とご心配をお掛けしました」
とりあえずは、お礼の言葉を申し上げましょう。私はソファから立ち上がると、腰を落として会釈をしました。
「ああ、ヴィヴィ。そんなに気を使わなくて良いよ。君がお礼を言う事じゃないし、一番の被害者は君なんだから」
エレン殿下はそう言って、立ち上がると私の肩に手を置きました。
ちょっと? ナンカ馴れ馴れしくありませんこと?
「まあ、図らずもこうなってしまいましたので、今更どうにもできませんから、私も新たな気持ちでいきますわ」
肩に置かれた殿下の手を、やんわりと外してにっこりと微笑んでみます。ええ、そうですわ。決して私が望んでこうなった訳では無いのですからね。
外された手で殿下はサラリと髪を搔き上げると、これまた見惚れる様な微笑みを返してきましたわ。
本当に胡散臭い。そして手強い感じがしますわね。まあ、負けませんけど?
「で? どうしたの? 君がココに来るなんて、単にお礼を言いに来ただけじゃないでしょ?」
再びソファに座り直して、殿下はそう言いました。ええ、良くお判りで。
私は背筋を伸ばして口を開きました。
「アリアーヌ嬢が如何されたのか、皆様ご存じですの?」
「「「行方不明?」」」
三人の声が揃いましたわ。一番驚かれているのは、ハインツ様でしょうか? 思わずソファから腰を浮かしたように見えましたもの。
「エレン殿下は、ご存じだったのではございませんか?」
改めてエレン殿下を見詰めてそう聞くと、殿下はふるふると首を振りました。あら、本当にご存じ無いのかしら?
「いや、知らなかった。学院には昨日、ポルテス男爵家から退学届けが出されたらしいが……行方不明とはどういうことだ? ハインツ、レイン。君達がアリアーヌ嬢に会った時はどんな様子だったんだ?」
ハインツ様とレイン様が顔を見合わせましたけど、それってジョイル様を探していた時ってことですわよね。
「はい。私とレインが、子爵領の別荘で彼女を見た時は、ブランドル殿と一緒でした。御者役の元騎士は、近衛騎士を見て恐れをなして逃げてしまったようですけど」
「その時、どんな様子でしたの?」
思い出すように目を伏せていたレイン様が、珍しく口を開きましたわ。
「その時は、まあ、二人の世界と言うか何と言うか……とても悲観的な雰囲気では無かった。ただ、踏み入った時ハインツを見て、アリアーヌ嬢は『助けに来てくれた』とか何とか、可笑しな事を口走っていたがな」
嫌な事でも思い出すように眉間に皺を寄せたレイン様は、今まで聞いた事が無い程冷たい声で言い捨てましたわ。この方が、こんなに感情を表に出すのは珍しいです。よっぽど嫌な気分だったのでしょう。
「まあ、そんな事を? さすがアリアーヌ様ですわね。ハインツ様に乗り換えられればと思ったのでしょうけど……でも、その時はブランドル様がご一緒でしょう? どうするつもりだったのでしょうね?」
はあ、聞けば聞くほど浅はかと言うか、節操無しと言うか。でもある意味期待を裏切らない方ですわね? これではジョイル様が捨てられるのも、時間の問題だったのではなくて?
「それで、お二人はその別荘にそのまま?」
「ああ。ジョイルがその場にいなかったから、周辺を探す為放って置いた。ジョイルを見つけて帰る時にはまだ馬車があったから、そこにいるのだと思ったが……」
つまり、アリアーヌ様とブランドル様は、その別荘で隠れていたはずなのね。二人きりで既成事実を作って、ダンデル氏から息子のブランドル様に乗り換えるために。
「でも、別荘には誰もいなかったようですわ。壊れて乗り捨てられた馬車と、怪我をしたブランドル様が見つかったそうです。
どうやら、御者をしていた元騎士がいなくなったために、ブランドル様が馬車を御していたようですわね。でも、きっと彼には出来なかったのでしょう? 彼は馬にも乗れなかったみたいですから」
ここまで話して一息入れました。だって、これはあくまでも想像ですから。
「その馬車にアリアーヌ嬢は乗っていなかったのか? どこに行ったんだ?」
エレン殿下も驚いたのでしょう。ああ、やっぱりアリアーヌ嬢の事には興味が無かったのですね? 本気の知らない顔で聞いてきましたもの。
「さあ……怪我をしたブランドル様は、どうも記憶を無くしている様で、ここ数日の記憶が無いのですって。ですから、子爵領の別荘に行った事もアリアーヌ様と一緒だった事も、覚えていないらしいのですわ」
コレが、私の手の者達から届けられた情報です。
「馬車の壊れた場所から推測すると、もしかしたらアリアーヌ様は事故の拍子に、河に投げ出されたか……もしくは、ならず者に襲われて事故に遭ったのか……そこは、お調べ下さらないと。ただ、これだけははっきり言えますわ。アリアーヌ・ポルテス男爵令嬢の姿が消えました」
「「「……」」」
まあ、そうですわね。皆さん黙っちゃいますわね。
とにかく、既に学院を辞めているアリアーヌ嬢については、この場で何か言えることはありません。ありませんけど、まさか行方不明になるとは思ってもみませんでした。
「エレン殿下。レベネン商会は、ポルテス男爵家とは婚約解消するそうですわ。ダンデル氏の顔も丸つぶれでしょうし、跡継ぎの最有力候補が大怪我を負っているのですから」
何でしょう。ここまで来るとダンデル氏に同情してしまいますわ。
「ヴィヴィ。ちょっと待って、婚約解消とは言ってもアリアーヌ嬢は行方不明なんだろう? それも生死不明の」
殿下が気付いたようですわ。こめかみを押えて、頭痛を耐えている様な表情です。私は肯定の意味を込めて、大きく頷きました。
「そうか。アリアーヌ嬢がもし事故で死亡していれば、ブランドル殿の過失になるな。それにブランドル殿に拉致誘拐されたと言われれば、それも成立してしまう。彼女の生死が不明な状況では、レベネン商会も大きな責を負うことになるのか……」
「真相を隠したいレベネン商会とポルテス男爵家は、アリアーヌ嬢が消えてくれた方が都合が良いでしょうね。多額の違約金を発生させず、出来る限り醜聞を抑え込む為にも」
これだけの醜聞ですから、表に出せばそれは面白おかしくなるでしょう。貴族新聞も庶民の新聞も一大スキャンダルで報じますわよね。
つまり、何とかしないと、私にも特大のとばっちりが来そうなんです!
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ありがとうございます。
姿を消したアリアーヌちゃんですけど、
どこに行ったのでしょうねぇ。
特大スキャンダルのお土産を残して
くれたので、何とかしないといけません。
それに、ちっともヴィヴィちゃんと
甘くならない状況に、エレン君が
そろそろヤキモキしそうです。
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別話『悪役令嬢(の娘)は天使の皮を被ってます!!』も宜しくお願いしますm(__)m




