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ノスタルジアの魔女  作者: 記角麒麟
ノスタルジアの魔女
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──郷愁──

 ※この章は時系列に沿って描かれておりません。

  陰蟲終了後、時系列上では、第二章 闘技 へ移動し、そのまま死神と魔女を経て、第一章 失敗 に続きます。ご了承ください。

 ──少年は走る。



 ひたすら走る。

 どこへ行くともなく、何かから、影から怯えるように逃げる。

 走る。

 走る走る走る。

 とうとう力尽きた彼のその服装は、解れに解れて、ボロボロになっていた。

 少年法は息をく。

 暗い、暗い街の中を、石畳の上を走る。

 ただ一人、彼の信じる人のために。

 三角帽子を目深に被った、緑色の目をしたあの人のために。


 少年には何もない。

 あるものと言えば、それは彼から与えられた希少な魔眼と特別な薬の作り方だけ。


 すべての色は帰郷する。

 彼のもとへと帰郷する。

 少年の願いを聞き届けるために、それは帰郷する。

 思いは色となる。

 想いは色となる。

 願いは色となる。

 願望は色となる。

 色は人から滲み出る。

 色は物から滲み出る。 

 色は現象から滲み出る。

 色は思考から滲み出る。

 そうして滲み出た色の余韻は、世界へと溶けて還って行く。

 色は世界へと帰郷する。


 そんな世界を見届ける。

 それが、郷愁色ノスタルジアの魔眼。


 力尽きた少年は、怯えた目をして蹲る。

 なにもする気になれない。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 胃の奥がムカムカして気持ちが悪い。

 少し吐き気もする。


(はやく……帰りたい……)


 不意に、倒れた少年の周りを白銀色の霧が包んだ。


「まったく、我輩も物好きだな」


 霧の中から、声の主は自嘲するように笑う。


 霧の中はもう既に、その街の面影はなくなっていた。

 そしてそれは、いつの間にか湿った黒い土が敷き詰められた森の中へと変わっていたのだった。

 少年の倒れた先には、巨大な屋敷があり、周囲ではカラスが鳴いている。

 月光は差さず、昼間でも暗いようなそんな森で、声の主は姿を現した。

 高い背中に長い銀髪を揺らめかせ、強調するように豊満な両胸をさらす褐色の美人。

 蒼銀そうぎん色のその瞳は、何もかもを見透したような不思議なオーラを放ち、それがその容姿と相まって妖艶さを醸し出している。

 彼女の名前はノスティ・アルレイラ。

 白銀の魔女と呼ばれ、世界中を旅する天才魔女術師。


 彼女は少年を抱えあげると、その屋敷の中へと連れ込んだ。

 ノスタルジアの魔女をお読みいただき、誠にありがとうございます。

 もしよければ、ブックマーク、感想、その他ご指摘等ありましたら、お願い致します。

 次話も読んでいただけると、光栄に思います。


 以上、記角麒麟より。


※主人公の性別を変更します。

 しばらくの間流れがおかしくなりますが、ご了承ください。

 (2016/6/18)

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