表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段下は××する場所である  作者: 羽野ゆず
階段下は××する場所であるーHow done it?
5/162

1-0 ひとめ惚れ

 恋をするなら、ひとめ惚れ。


 きっとそうだろう、と雷宮らいきゅうひかるは信じていた。

 いつか王子様が、なんてメルヘンな域には達してないが、何の確信もなく、ただ漠然と思い込んでいたのである。


 高校三年生の夏の終わり。それは突然に、雨と雷の日におとずれた。


 少年(かれ)は空を見上げていた。

 ぽつりぽつりと落ちてくる雨。むらさき色の雨雲をうれうように、空を見上げている。傘は持っていない。

 艶やかな黒髪、水晶玉のような瞳、白い頬はあかく上気している。


 イケメン?


 違う。そんな風に騒がれる男子を光は理解できずにいた。

 外面が良くてちょっと愛想が良いくらいじゃ、ダメだ。内面から滲み出るような「良さ」がないと。彼は、たぶん、光が心のなかで描いていた理想そのものだったのだ。


 夏服じゃ肌寒いくらいの気温だったが、光は、体温が高まっていくのを感じていた。

 傘を開くのも忘れて彼の姿に見入る。

 すらりとした体躯(たいく)にまとうのは、自分と同じ学校の制服だ。でも、彼を見たのは初めてだろう。逢っていたら覚えていないはずがないから。


 雨はますます強くなってきた。光はさすがに傘を開く。

 少年は濡れたまま、微動だにせずいる。


 なぜ雨に打たれているんだろう――?

 当たり前の疑問がようやく浮かんだとき、辺りが一瞬明るくなった。


「……っ!」

 

 雷だ。

 閃光せんこうとともに、雨の勢いがますます増す。さすがにこれ以上はいられない。名残惜しげに少年を一瞥いちべつして全力で走った。

 

 心臓がどきどきしている。

 こんな気持ちは初めてだった。まるで生まれ変わったよう。



 これが、恋――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ