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階段下は××する場所である  作者: 羽野ゆず
カップラーメン5ケ―Hikaru's unlucky day
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bonustrack ハグ・ミー?

 水無月日向はおもちゃ屋が好きだ。

 専門店に足を運ぶと、高校生になった今でも心が踊ってしまう。

 子どもの頃はもっと沢山のおもちゃ屋さんがあった気がするけど、最近ではめっきり店舗が減ってしまった。これも少子化の影響だろうか。

 親子で混みあう日曜日の店内で、日向は解せない。こんなに賑わっているのに……。


「ん~。クマじゃないんだよな」


 子どもたちにまぎれて、ぬいぐるみコーナーで唸っているのは、スレンダーな体型の女子大学生。

 背伸びしたりしゃがんだりして、陳列されているぬいぐるみを真剣な目つきで吟味している。


「光さん。僕、ゲームコーナーを見てきてもいいですか」


 新作のゲームが入荷している頃合いだ。そわそわしている日向に、光はぴしゃりと言う。


「だめ。ここにいろ」

「えー……」

「犬。やっぱり、犬だな。うん、そうだ」


 光の視線が、イヌのぬいぐるみと日向を忙しく行き来している。

 

「あの。何をしているんですか」

「日向と似たぬいぐるみを探しているんだよ。お前、黒目がちだから犬かなぁって」

「なぜ僕に似たものを?」

「いいじゃない。何を選ぼうが自由でしょ」

「……ですけどね」


 はあとグマにまつわる件の罪滅ぼしのため、今度は光にぬいるぐみを選んでもらい、プレゼントしようと決めた日向であった。

 光はしぶしぶながらも、「そこまで言うんだったら買ってもらう」とおもちゃ屋に付いてきてくれた。


「持ち運べるタイプじゃなくていいんですか」

「いいんだよそれはもう! うーん。チワワか……豆柴かトイプードルか」

「どれも似たようなものじゃ?」

「ばか、全然違うよ! 全国のワンコ好きに謝れよ」

「す、すみません」


 そんなワンコ好きだったっけ?

 日向は、彼女が時間をかけて厳選したぬいぐるみを購入し、店員さんにラッピングしてもらってから手渡した。


「ありがとう」


 赤いリボンがついた包装紙ごと、嬉しそうに抱きしめる光。

 どういたしまして。


 ……にしても、光がぬいぐるみ好きだったとは。意外な一面を知ってしまった。

 いや、そうでもないか、と思い直す。

 クールなイメージの彼女だが、実は、お姫様っぽい雑貨が好きなことを日向は知っている。ひとり暮らしをしている部屋の内装や服装に、その趣味が見え隠れしているし。

 

『光は中学までクマちゃんを抱いて寝てたんだよ』


 いつだったか、野巻アカネがそう教えてくれたことがあったっけ。

 持ち帰ったら、あのイヌのぬいぐるみと一緒に寝たり、着替えたり、お風呂に入ったり……?


 いささか過ぎた妄想をして、何ともいえない気分になった。今も光は大事そうに紙袋を抱えている。

 じわじわと日向をむしばんでいく感情。

 それは、たしかに、嫉妬だった。


「あーもう……買わなきゃよかった」

「なんでだよ」




(Thank you for reading!)

ここまでお読みいただきありがとうございます。

よかったら、ブクマ、評価、感想などなどお待ちしています!

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