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アウトコレクター  作者: 一ノ瀬樹一
第四章 弁天堂美咲と円環世界
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弁天堂美咲と円環世界《トラースワールド》10

 後日談。

 と、言っても弁天堂美咲は、この場にいないので、代わりにこの黒柳迷斎さんが語るとする。


 カフェでの一件を終え、トリックスターが屋敷へと足を運んだ。依頼した例の件の報告と、別れの挨拶をするためらしい。

 その返は、どうも俗物ぽくて困る。


 「――てことで、美咲ちゃんは無事、一人で解決することができました」

 「ご苦労だったな。それにしても、六十八回とは、ずいぶんと時間をかけたものだ」

 「いやいや。評価すべきは、その精神力でしょう。普通は、とっくに頭がイカレてもおかしくないでしょう。それが、美咲ちゃんの強さなんだろうなぁ」

 「違うな! 弱さだよ。諦めないからこそ、自分が傷つくことに鈍感になっている。気がついた時には、廃人になってしまう」

 「へー、ずいぶんと気にするじゃない。あの黒柳迷斎が、これは意外だね」


 気にしている。

 端から見れば、そのように映っているのだろうか?


 「気になってなどいない。私の下僕が、どうなろうが知ったことではないが、あいつは何でも救おうとする。今後、つまらない噺を持って来られては困ると言っているだけだ」

 「なるほどね。そう言うことにしときますよ。それより、迷斎。机の上にドーナッツを置きっぱなしにしていたのか?」

 「ああ、片付けるのが面倒でな。それが、どうかしたか?」

 「おそらく、美咲ちゃんはここに来たぞ。これを見たら、依頼主が迷斎って解っちゃうんじゃないかな?」

 「弁天堂に、勘が働くとは思えないが、バレたならバレたで別に構わない」


 そう、弁天堂には学んで欲しいのだ。これから先、生きていくには賢くなってもらわねばならない。

 それでなくても、弁天堂の未来には暗雲が立ち込めているのだから――。


 それともう一つ、弁天堂には学ばなければならない理由があった。


 「あ、それと、例の話は本当なのか?」

 「ああ、候補ではあるな。今回の件は、そのことも踏まえてのテストでもある。ゆくゆくは――」


 おっと、これはまた別の噺であった――。

 

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