弁天堂美咲と円環世界《トラースワールド》06
「それでは――」
「まあ、待て弁天堂。順番を追って説明しよう」
迷斎さんは、私の言葉を遮りました。
何でもお見通しの迷斎さんには、私の言葉を聞かなくても解っていたのでしょう。
それにしても、迷斎さんでも解決出来ないことがあることに、私は驚きました。これまで、人間性はどうであれ、どんな怪奇現象でも解決してきた迷斎さんでしたので、今回のことも迷斎さんに相談すれば、見事解決――となると思っていたからです。
正直、迷斎さんに解決出来ないと言われた時点で、私は動揺を隠しきれずにいました。
「正確には、私が関与することが出来ない――と言った方がいいかな」
「関与出来ない?」
「ああ、そうだ。弁天堂は昨日、私と会っていないのだろう? 昨日と同じ――、これから弁天堂は昨日と同じ日を繰り返すことになる。私が関与出来ない理由は、そこにある」
迷斎さん曰く、私以外の人間は昨日と同じ日を繰り返すループ現象のため、私だけが同じ日を繰り返しているそうです。そのため、昨日迷斎さんに会っていないので、迷斎さんはこのループ現象の原因となっていないので、関与出来ないのだと言います。
「それなら、私はどうすればいいのですか?」
「自分自身で解決するしかない。昨日の弁天堂の行動の中に、今回の怪奇現象の原因がある」
つまりは、私一人でこの怪奇現象を解決するしかないようです。これほどまでに、心もとないことはありません。これまでも、私は迷斎さんに頼っていただけで、私一人で解決したことはありません。しかし、今回は私一人で解決しなければなりません。
そんな私の心情を察したのか、迷斎さんはヒントをくれました。
「弁天堂。今回のことは、トリックスターの仕業だ」
「トリックスター?」
「トリックスターは、イタズラ好きでな。こんな、くだらないループ現象を起こして、遊んでいるのだよ。しかし、トリックスターが厄介なのは、時間や時空を歪めるような強大な力を持っていることだ」
そう言って、迷斎さんは手のつけていないドーナッツを持ちました。
「いいか? このドーナッツのように、弁天堂は同じ時間をループしている。しかし、そのループの原因か、あるいはトリックスターを見つければ、この怪奇現象は解決出来る」
「トリックスターを見つける? どういうことでしょうか?」
「さっきも言ったように、トリックスターはイタズラ好きだ。弁天堂のループ現象の登場人物に、紛れ込んで楽しんでいるに違いない。強大な力を持っているのに、幼稚な性格をしているからな」
だから、トリックスターを見つければゲームオーバー。それで解決すると迷斎さんは言います。
このループ現象を解決するには二つ。
一つは、このループ現象となる原因を突き止めること。
あるいは、昨日の登場人物の中に紛れている、トリックスターを見つけること。
つまりは、私が昨日出会った人で、何らかの関わりを持った人物。
委員長。
まゆりさんと西園寺さん。
カフェにいた、女子高生グループとOL風の女性。
後は、お母さん。
その中に、トリックスターがいるのでしょうか?




