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アウトコレクター  作者: 一ノ瀬樹一
第四章 弁天堂美咲と円環世界
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弁天堂美咲と円環世界《トラースワールド》02

 ピーピーピー。


 起床を告げる目覚まし時計の音を止め、私の一日は始まります。昨夜は、大好きな小説家の新刊発売日であったので、ついつい夜更かしをしてしまいました。

 ちょうど、五十六ページにしおりが挟んであるので、ここまで読んだのでしょう。帰り次第、続きを読みたいと思います。


 私の朝は、顔を洗って歯を磨き、軽くお化粧をして髪を整えます。お化粧は、中学生の時にお母さんに習ったもので、女としてのたしなみ。エチケットとして習ったものが、習慣なっています。


 そして朝食。

 メニューは、トーストとコーヒーが苦手な私は、ミルクたっぷりのカフェオレ。トーストには、お母さん特製のマーマレードをトーストに余すところなく塗りたくり、一気に頬張る。

 その瞬間、甘さの中に柑橘系特有の程よい酸味、時折顔を出す皮の苦味が何とも言えない至福の瞬間ならぬ、私腹の瞬間が訪れるのです。


 さて、時間もさほどありませんので、さっさと朝食を頂くことにしましょう。


 「……あれ? お母さん、マーマレードは?」

 「あら? そこの瓶入ってなかつたかしら?」

 「ないよー。空だよ」

 「ごめんなさい、切らしてしまったみたいね。今日はバターで我慢してね」

 「えー」


 今日中に作ってくれることを約束し、私は仕方なくバターをトーストに塗り、食べることにしました。


 「そう言えば、美咲。進路は決めたの?」


 トーストを食べ終える頃、お母さんがコーヒーカップを持って、テーブルのいつもの席に座りました。


 「うーん。大体決めたけれど……」

 「そう。来週、三者面談があるから、あさってお父さんにもお話しないとね」


 私のお父さんは、出張が多い人で仕事人間です。日本全国ならず、時には海外にも出張するので、今も出張中であさってには帰って来ます。


 「今日帰って来たら、話すよ」

 「そうね、そうしてちょうだい――。あっ!」


 お母さんが、コーヒーを飲もうとコーヒーカップを手にした時です。手が滑ったようで、お母さんはコーヒーカップを床に落としてしまいました。


 「大丈夫? お母さん?」

 「大丈夫よ? 手が滑っただけだから――。それより、美咲急がなくていいの?」

 「え!?」


 時計の針は、八時を指していました。朝のホームルームまで後、二十五分しかありません。


 私は慌てて家を出て、学校まで走ることになりました。


 「では、ホームルームを始めます」


 何とか遅刻は間逃れたものの、全速力で走って来たため、髪は荒れ放題。汗はびっしょりで、すでに帰ってシャワーを浴びたい気分です。


 こんなことなら、ゆっくりと朝食をとっていないで、早く家を出ればよかったでした。


 「――と言うことで、立候補もいないのでくじで決めたいと思います」

 「――まゆりさん、くじって何?」

 「美咲さん、聞いていなかったのですか? 週末の地域清掃に、各クラスから二名ださなければならないらしくて、それをくじで決めるそうよ」

 「へーそうなの」


 席順にくじを引いていき、窓際の後ろから二番目の私のところに順番が回ってきた時には、残り二枚。すでに、一人は当たりが出ているので、この二枚の内どちらかが当たりとなります。


 右か左か――。正直、週末の地域清掃には参加したくないので、ここで当たりを引くわけにはいきません。


 「弁天堂さん。ホームルームが終わってしまうので、早く引いてもらえない?」

 「あ、ごめんなさい」


 優柔不断の性格が災いし、委員長に迷惑をかけてしまいました。とにかく、後は天に運命を任せ、私は左のくじを引きました。


 「あ!」

 「決まりね。最後の一人は弁天堂さんってことで、以上でホームルームを終わります」


 二分の一の確率とは言え、まさか当たりを引くとは思っていませんでした。今日は、朝から本当についていません。


 しかし、本当の不幸はこれからなのでした。

 

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