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「では、話を進めようか」
「はい」
「君は、この子を誘拐して、性的暴行をしようとしたんだな?」
「違います!何度言ったら分かるんですか!僕は小さい子には興味はありませんし、そんな特殊な性癖は持ち合わせてませんっ!」
「……君ねぇ、そんなに必死になったら逆に怪しまれるよ。ネタはもう上がってんだからさぁ。早く吐いちまいな、楽になるぜぇ」
いつの時代の警察官だよ、と思ったが口にしないでおこう。
大体、その子が僕の部屋に居なかったら無実の罪を着せられずに済んだのに…
これだから小さい子は嫌いなんだ。
「じゃ、裁判にでもかけてみるんだな。今日のところは釈放だが、次何かをやらかしたらタダじゃ済まさんぞ。じゃあな」
「はぁ…すいません…」
ギィィ…と重そうな扉が閉まった。
僕も早く出てしまおう。
* *
……………………
……………
「…何だこれは」
目の前には散らかった六畳間。
と、子供。
「どちらさまで?」
「あー!起きたー!おはようごじゃいましゅ」
「…おはようございます…どちらさまで?」
「えー?わたしー?わたしはぎおんこずえ、3歳でしゅ」
「…えらいねー。自己紹介どうも。…親御さんは?」
「おやごぉ?何それー」
「お母さんは?お父さんは?」
「お母さんもお父さんもおしごと。だから、お家をぬけだしてきたの」
…おおーう…こりゃとんだじゃじゃ馬姫だぜ。
処理速度が追いつかねぇよ。
メモリが少ないのか。
よし、いい機会だ。脳内メモリを買い換えよう。
「お家の電話番号は?」
「ごーごーよんにーはちさんでしゅ」
「へーへー」
55-4283っと…
プルルル…プルルル…
ガチャ
「あ、もしもし、水門ですけど、実は、お宅の娘さんを…」
『おかけになった電話番号は、現在、使われておりません。もう一度確認して、再度、おかけ直し下さい…』
…騙された…
というより、たかが3才児が家の電話番号を知っている訳が無いじゃないか。
はぁ…徒労…
電話帳はっと…
俺は本棚に向かい、電話帳を探す。
あった。
1年ほど更新してない電話帳。
祇園…ぎ…一件しかねぇ。
分かりやすっ!
53-7284…
全然違うじゃねぇか!
プルルル…プルルル…
ガチャ
「あ、もしもし、水門ですけど、実は、お宅の娘さんを…」
『え!?梢が!?父さん!早く警察に連絡を!』
『おう!待ってろ!』
「え!?ちょ、ちょっと!」
『電話番号の保存をしとかないと…53-7322…あら、意外と近場ねぇ』
「ちょ!奥さん!それ誤解だって!」
『ふふふ…観念しなさいこの誘拐犯め!年貢の納め時よ!』
「住民税もろもろはちゃんと払ってます!だから通報はやめっ!」
『もう遅いわよ。父さんが連絡取っちゃったから』
「俺の人生が…」
『母さん!警察って何番だったっけか?』
『もう!118番よ!父さん、バカになっちゃったんだから…』
「お前もバカだよ!110だよ!夫婦揃って漫才でもやってんのか!」
『ふふ…父さん!110だって!親切な誘拐犯さんが教えてくれたわ〜!』
しまった!ついツッコミ本能が…
『じゃぁね、親切な誘拐犯さん』
ガチャ
ツー…ツー…
畜生!切られた!
しかもあのババァ、最高に性質が悪ぃよ!
あぁ…これで俺の人生はドロドロ間違いなしだ。
「だいじょうぶでしゅか?おかおがあおいでしゅよ?」
「お前のせいだよ!」
「ふわっ!びっくりしました…」
「何でこんな所にいるんだよ!お前のせいで俺の人生は崩れちまったよ!どうしてくれんだよ!」
俺は咄嗟に胸ぐらを掴んでしまった。
それが、仇となったらしい。
最悪なタイミングで、警察前衛部隊が強行突破を決行した。
「手をあげろ!然もないと………お前…誘拐だけが目的じゃなかったのか!?」
「ちちち違います!事の成り行きで!」
「お前がそうなるように成り行かしたんだろうが!早く来い!」
「嫌です!僕は犯罪なんて犯してません!」
「重犯罪だよ!十二分に!そういうのは後から大人の人とやらせてあげるから!早く来い!」
「嫌ですぅぅぅぅぅ!」
「だぁぁ!しつこい!おいお前等!強引に連れていけ!重症だ!」
『アイアイサー!』
「ほら、飲め」
「何を…んくっ!」
「あと30分もすれば眠くなるだろう」
「睡眠薬?」
「そうだ。さすがにまだ眠くはならんか…」
「流石にそれは…ん?何だ?急に眠気が…」
どんだけ即効性なんだよ…
* *
カン…カン…
「ん…」
「目は覚めたか」
「ええ…一応は。最悪の目覚めですが」
「それは皮肉か?」
「半分は。というか、ここ、どこです?」
「一般的には取調室と言われる取調室と言う所だ」
「それって取調室なんじゃないですか…精神的に元気が無いんですから突っ込ませないで下さいよ…」
「じゃぁ、突っ込む元気が戻ってきたところで、取調べを始めようか」
「だから元気は無いんですって…絶対嫌がらせじゃないですか」
「ぶっちゃけ、君はさっきの子に×××をしようとしたんだね?」
「ぶ、ぶっちゃけ過ぎですよ!しかもしようとしてません!」
「じゃあ何で誘拐したんだ?」
「しようとしてした訳じゃないですし、してもないです」
「ほう、その心は?」
「朝起きたら、部屋に居ました」
「…警察ナメんのも大概にしろよコラ」
「これが事実なんだから仕様がないじゃないですか。最新の鑑識の技術で何とかならないんですか?もしそれで無実が立証されたら慰謝料一千万円はくだらないですよ」
「もし、本当にそうだったならな。それくらいは出してやろう」
「約束ですよ」
「あぁ、分かった。男に二言は無い」
「警部!大変です!只今、彼の無実が立証されました!」
「何…だと!?」
「鑑識の調査結果によると、女の子の入室時間が8時で彼の起床時間より早かったということです!」
「…そんなバカな…」
「おっさん、約束は約束だぜ?」
「契約破棄は…出来ないか?」
「…出来るわけねーだろ!俺がどんだけ濡れ衣着せられたかわかってんのか!?ちゃんと払えよな!」
「わ、分かった。部下に振込を命じておく。口座番号は?」
「114-3991だ。覚えとけよ?」
「あぁ。バッチリだ」
怪しさ臭プンプンなんだが…
「じゃ、釈放ってことで。じゃな」
「くそっ!若造相手に一杯食わされた!」
…お前の思い込みのせいだろうが…
* *
「ふぅ…いつぶりの太陽の日差しだ…?」
無事事件を解決して、やっと外に出られた。
「学校もサボっちったし、あと半日何するかな」
…寝よう。
いろいろ大変で6時間も寝てないからな…
疲れたし。
そうだな。それが一番いい。
勝手に納得し、俺は家路についた。
「あーあ、今日は大変だった…」