表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今世では恋を諦めた伯爵令嬢ですが、前世の夫が今世で執着してきます  作者: 陽ノ下 咲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/19

第十二話 場違いなお茶会①

「フィオナ、遅かったじゃないか」


 軽やかな声とともに手を振ったのは、フィオナ王女の兄であり、この国の王太子でもある、レオナルド・ルミナリア殿下だった。


 柔らかく光を受けるシルバーブロンドの髪に、どこか人懐こさを感じさせる、鮮やかな翠の瞳。

 整った顔立ちは気品に満ちていながらも、威圧感はなく、むしろ穏やかで親しみやすい印象を与える。

 王族としての威厳と、柔らかな人柄を併せ持った青年である。

 そしてその隣には、エドガー・アルヴェイン公爵の姿もあった。

 二人の姿を認めた瞬間、セシリアの身体は反射的に動いていた。

 すっと背筋を伸ばし、最敬礼の姿勢を取る。


「セシリア・ヴァルモンドにございます。フィオナ殿下にお供し、参上いたしました」

「ん?……誰かと思ったら、セシリアか」


 レオナルドは一瞬だけ目を見張り、感心したような声で続ける。


「衣装ひとつで変わるものだな。すごく綺麗で驚いたよ。ああ、もう顔を上げていいよ」


 柔らかな声音に促され、セシリアはおずおずと顔を上げた。


「……恐れ入ります、殿下」


 戸惑いながら礼を述べる。

 視線を上げたその先で、レオナルドがふわりと笑みを浮かべて頷いていた。

 けれど、その隣に立つもう一人の人物に目を向けた瞬間、一瞬で空気が変わった。


(……ヒッ!)


 セシリアは思わず息を呑んだ。

 エドガーが明らかに、機嫌が悪い。

 いや、それどころではない。

 静かに座っているだけなのに、周囲の空気が凍りついたかのような圧を放っている。

 視線はレオナルドへと向けられており、その眼差しは冗談では済まされないほど鋭かった。

 まるで、今にも斬りかかりそうなほどの威圧感がある。


「セシリア、とっても可愛いわよね」


 その空気をぶった斬るかの様に、フィオナが明るい声で、楽しげに言った。


「私、いい仕事したでしょ?」

「ああ、本当にそうだな」


 レオナルドもくすりと笑いながら同意する。


「まさかあのセシリアが、こんなに華やかな姿になるとは思わなかったよ。いいじゃないか、新鮮で」


 レオナルドのその言葉に、隣の圧がさらに強まる。

 そのなんとも言えない緊迫感に、セシリアの背筋に冷や汗が伝った。


「……レオナルド様」


 その時、エドガーの低い声が、静かに響いた。


「どうした、エドガー」

「少し、距離が近すぎるのではないですか?」


 エドガーが、冷めた低い声で呟く。


「……は?」


 その言葉を聞いたレオナルドが、一瞬、目を大きく広げて、驚いた顔をした。

 そしてその後、心底面白そうな顔をして、目を細めた。


「エドガー、お前……、私は普通に褒めただけだぞ?」

「それが問題だと言ってるんです」


  間髪入れずにそう返すエドガーに、レオナルドは、もう我慢ならないという様に、肩を振るわせ出した。


「こんなエドガー、初めて見たな……。いや、実に面白い……」


 そんな二人を見て、フィオナが少し呆れた様に言った。


「相変わらずね、あなたたち」


 フィオナのその言葉に、レオナルドが肩をすくめる。


「まあ、乳飲み子の頃から一緒だからな。今さら遠慮も何もないが……」

「……むしろ遠慮していただきたい場面もあるのですが」


 そのエドガーがまたツボに入ったのか、レオナルドがまた笑い出してしまった。

 二人のやり取りを見ていたフィオナもまた、呆れつつも、楽しそうに笑う。

 するとエドガーがフィオナの方に視線を移し、そのどす黒い空気を纏ったまま、低い声で聞いた。


「……お聞きしますが、このドレスをセシリア嬢に送ったのはフィオナ様ですか?」


 瞬間、フィオナとエドガーの間の空気がピリッと張り詰める。


「え……、ええ。そうよ」


 先程までレオナルドに向けられていた、突き刺さるような鋭い視線が、今度は自分へと向けられる。

 さすがのフィオナも肝を冷やし、わずかに肩を震わせながら答えた。

 するとエドガーは眉を顰めて考える素ぶりをした。


「フィオナ様だったら許容範囲か……?いや、でもな……」


 明らかに納得していない様子で、ぶつぶつと何かを呟いている。


(エドガーって、セシリアのことが絡むとほんと人が変わるわよね)


 フィオナは内心でそう呟き、呆れたように小さく息をついた。


「エドガー……、嫉妬する前に、セシリアに何か言うことあるんじゃないかしら……?」

「……っ」


 その一言で、エドガーははっとした様に、セシリアへと視線を向けた。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ