僕
「ねえ、あっ君」
「ど、どうしたの?」
翌朝教室についてすぐ、それまでいつも通りだったはずの加恋の雰囲気が変わった。笑顔を浮かべているはずなのに表情は暗く、その裏側に俺を咎めるような視線を浮かべている。
机の上で頬杖を突き、身を乗り出して見つめてくる加恋は、とても何か言いたげだった。
「昨日の放課後、何してた?」
「図書委員会の仕事だけど……」
「その時、あの女と仲良くしてたんだ」
汗が額をつーと流れる。張りつめたような緊張感が漂っている気がする。
それこそ、警察官から尋問を受けているかのような。
「な、仲良くって。美緒ちゃんとちょっと話してただけだよ」
「へぇ……美緒って言うんだぁ」
「っ」
色気のある、どこかねっとりとした声。怪しく響くその声に、背筋が凍る感覚がする。
「ねえ、あっ君」
「な、なに?」
さっきよりも声が震える。自分が問い詰められているのが明らかになった。その状況が、俺をいやおうなしに緊張させる。
「私、他の女と関わらないでって言ったよね?」
「で、でも、絶対に関わらないようにするっていうのは難しいわけで……」
「言い訳しない」
「はい」
逆らい様がなかった。どうしようもない圧倒的な力に迫られているような感覚だ。
「あっ君は私のものなんだから。誰にも心を許しちゃ、駄目だよ?」
「は、はい……」
俺は、相変わらず加恋の言いなりだった。




