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京山美緒

「……」

「……」

「……」

「……な、なんだよ」

「いえ、別に」


 放課後のこと。図書委員会の仕事を全うするためカウンター席に座っていると、カウンターの向かい側で屈んだ女生徒がじっとこっちを見つめてきていた。


 その、じとっとした舐めいるような視線は居心地が悪く、居たたまれない。


「昨日は悪かったよ。加恋が暴走しちゃったことは謝るからさ」

「別に怒ってませんよ。だから先輩が謝る必要はまったくありません」

「じゃあどうしろって言うのさ……」


 この子は京山美緒。

 1個下の後輩で同じ図書委員会の子。今年から同じ委員会ということで関わりがあり、お互い知って知らない中ではない。用事さえあれば会って話をすることもある程度の間柄だ。

 

 ただ、先日廊下で話をしていたのを加恋に遮られたせいだろうか。

 今日は当番でもないのに図書館に足を運び、俺のことを恨めしそうに睨み上げてきていた。

 カウンターの淵から特徴的なお団子ヘアーとジト目が覗いていた。


「……そもそも、先輩はあの加恋って先輩に甘すぎるんです。委員会の話でしたし、強く言ってくれればいいのに」

「そうもいかないよ。女の子には優しくしなきゃ」


 鼻まで出かかっていた顔が少し沈む。頬が赤く染まり、目線は横へと流れた。


「私だって、女の子ですよーだ」

「俺、優しくない?」

「優しくないですよ。加恋先輩にばっかりで」

「そんなことないと思うけど……じゃあ、どうして欲しいの?」


 女の子というのは繊細だ。

 ガラス細工のように壊れやすく、傷つきやすい。逆に磨き、光の当て方を工夫することで綺麗に輝く。

 俺だって加恋の言いなりってわけじゃないが、加恋のそんな言葉は正しいと思っている。

 俺はガラス職人じゃない。けど、せめて身近な女の子くらい少しでも輝いていてくれたら嬉しいなとは思う。そのために出来ることがあるのなら、これでも男の端くれ、何でもするつもりだ。


「出来ることならやらせてもらうよ」

「……なら、先輩にしか出来ないこと、やって欲しいです」

「俺にしか出来ないこと?」


 頷き、静かに立ち上がる。そして、美緒は何度か逡巡するように視線を巡らせた後、意を決した表情で口を開いた。


「これ以上加恋先輩と仲良くしないでください! 私……私、見ていて辛いんです! だから、その……!」


 そこに来て羞恥心が限界突破したのだろう。美緒は背を向け、逃げるように図書館を出て行った。


 唖然とする、俺を残して。

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