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菊池沢加恋

 どうもシファニクス。どうぞご気軽にシファニーとでもお呼びください。

「ちょっとあっ君! その女誰!」


 昼下がり。ちょうど昼休みが終わろうかという時間。

 廊下の中央で、ある女子生徒の声が響いた。


 その声に様々な生徒が振り返る中、俺、姫瓦新太も当然のように声のする方を振り返っていた。


 そこには、俺の隣にいた女生徒を鋭く睨み、続いて俺へ詰め寄る女生徒がいた。


 名前は菊池沢加恋。

 幼稚園からの付き合いで、いわゆる幼馴染だ。小学校、中学校、高校までも全部が一緒で、何とこれがクラスもずっと同じだったりする。

 そんな彼女の容姿だが、正直に言って可愛い。

 

 ふんわり広がる明るい色のセミロング。全日本男子高校生の憧れる魅惑的な体の凹凸。大きな目に長いまつ毛、ほんのり色付いた唇とほど良く高い鼻の組み合わせは、アイドル顔負けの顔面偏差値だろう。たぶん数値化したらSSランクくらい。


 そんな完璧に近しい顔は、俺に近づくにつれて険しくなっていく。


「か、加恋? いや、ちょっと委員会の話があっただけで……」

「嘘よ! そんなの委員会の集まりがある時にすればいいじゃない!」

「たまたますれ違ったから、ついでに用事を済ませちゃおうって思っただけだから!」

「絶対、嘘! あっ君楽しそうにしてたもん!」


 両手で拳を握り、怒りを露にした加恋。その標的は、次第に俺から、隣にいた女生徒に向かおうとして……。


「って、あれ? さっきの女は?」

「お、女って呼び方はやめないか……? た、たぶん行っちゃったんでしょ。加恋が大声出すから、驚いちゃったんだよ」

「だってあっ君に色目使ってるんだもん!」

「それはないから安心して。ね?」

「むぅ……ねえ、ほんとにあの子のこと、好きになってたりしない?」

「しないしない。するわけない」


 大分失礼なことを言っている自覚はある。が、こう言っておかないと加恋は落ち着いてくれないことを知っている。


「そっか! それならいいね! じゃああっ君! 教室戻ろ!」

「そうだな。一緒に行くか?」

「うん!」


 そう返事すると、加恋は俺の手を取って廊下を歩きだす。

 正直公共の場でこれは大分恥ずかしいのだが、俺も周囲もだいぶ慣れてしまっている。お互い不干渉を貫いていた。


 この現状に思わず苦笑いを浮かべながら、俺は引かれる左手を見る。


 俺よりも少し小さい手は、白くて瑞々しい。どこを見ても汚点なんてない菊池沢加恋が持つ、唯一の欠点。


 それは――


「ちょっと、あっ君何ぼーっとしてるの! 一緒にいるときは、私のことだけ見てくれないと嫌だって、いつも言ってるじゃん!」

「え? あ、うん。そうだったね。大丈夫、ちゃんと見てるから」

「えへへっ、嬉しいなぁ」


 ――どうしようもない、偏愛の持ち主であると言うこと。

 今作は毎週土曜日更新の予定です。

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