第3話 ミリミ
俺は今病院にいる。なぜここにいるのか答えは簡単だ、死にかけた、否死んだからだ。だが病院の先生は死んでいたことに気づくはずもない、なぜなら俺は生き返ったからな!まあ俺自身そこのとこよく分かってない、一つだけはっきりしていることがある、あのネイサとかいう天使?神?のおかげで生き返ったこと。
「異状はないみたいですね。……七森さん?ボーっとして大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫です、少し考え事をしていただけです。」
あれこれ考えても仕方ない、一度家に帰ろう。
先生に「なら大丈夫そうですね、ではお大事に。」と言われ診察室を去る。
診察室を出るとケイが待っていた、十分間色々聞かれた。
「大丈夫だったか?どこかケガしてなかったか?」
マジの顔で聞いてくる。
「……それ聞くの十回目だぞ…もう帰ろう、この時期に川を泳いだ後に警察、そして病院行って俺疲れたし。」
特に警察の説教だ、自分の命を優先しろとこっぴどく怒られた、その後雑に褒められた。
あ、あと賞状を持っていくとかなんとか言ってた気がする。
「あ?ああ、そうだな。すまんすまん。」
そう言いながらもマジの顔で同じ質問を続けてくる。
こうして俺達は帰路につく。
「しかし薄情だよなー、お前の親。溺れた息子を迎えにくるだろ?普通はよ、一応電話は届いているだろうし。」
「んー言ってなかったけ?親父いま海外にいるんだよ、だから一人暮らし中」
そう、今俺は一人暮らしだ。親父が仕事で海外に行くことになった時は親戚の家に居候する予定だったのだが連絡が取れなくなっていたらしい、なんでも俺の名前を出した途端連絡が取れなくなってしまった。親戚とか言っていたが多分母親だろう。そのあと色々な親戚をあたったが誰も首を縦に振らなかった、少し悲しい。なので一人暮らしをすることになった、というかしなければならなかった。この話絶対にケイにはしたはずだ。
「へーそうなんだ、大変だなーお前も。……じゃ、俺はここで。」
「そういえばお前の家ここか…」
ケイは県外の高校に行くらしい、卒業式後ここを出ると昨日伝えられた。なんでも高校受験の時にできた友達の家でお泊り会をするらしい、入学式まで。入学式終了後そのまま寮で暮らすと言っていた。なのでしばらく会えなくなる。
ま、いいんだがな。だけどもっと前に伝えてくれていたら何か準備ができたのにな。
「じゃあな、マサキ」
「おう、またな」
ケイが家に入るまで見守った。しばらく会えなくなるというのにこんなに塩っぽい別れでいいのか、そんなことも考えたが永遠の別れって訳ではないんだからこんなもんでいいだろう。
???視点
「ただいま…って返ってくるわけないか」
家にマサキの声が響く。返事が返ってくるわけでもないのに毎日毎日『ただいま』と『いってきます』を欠かさず言っている、だけど最近のマサキの声は少し寂しそうだった、今日はいつもより一層そう感じた。
マサキは帰宅後いつも洗面台で手を洗いそのあと部屋に行きスマホをつつく、それがマサキの日課?なのかな。でも今日は少しおかしい、帰ってきてから手も洗わずリビングのソファに転がってずっとテレビを見ている、しかも普段見ないようなニュースを。なにかあったのかな。スマホもたまに触っているけどがっかりしたように机に投げた。やっぱりおかしい。
…にしても一人暮らしにはこの家は大きい、5LDKの3階建て、親父さんと二人で暮らすとしても広い、今はマサキしかいないから二部屋しか使っていない。一つはマサキの部屋、もう一つは物置部屋として使われている。使われていない三部屋はほこりだらけだ、たまに掃除くらいすればいいのに。
一時間近くたったがマサキはテレビを見ている、もしかしたら寝ているのかもしれない。見てみよーっと。
やっぱり寝ているみたい、つついてみよ。つんつんほっぺたを触ってみる、お餅みたいなほっぺた……ん?なんで感触があるの?
「んぁ…今何時だ…?」
一時間前
マサキ視点
「ただいま…って返ってくるわけないか」
いつも通り返ってくることのない言葉をなんとなく発する、習慣ってのは困るな。
いつもなら手を洗ってから自分の部屋に行くのだが今日は疲れたからリビングのソファでゆっくりしよう。そういえば今日の俺の勇士ニュースになってないかな。ソファに転がりテレビを点ける、とりあえずニュースを見る。
まだ俺のことがニュースには取り上げられてない、少しくらい取り上げてくれてもいいのに…もう少し粘るぞ。
あと天使についても少し調べてみよう。
「んぁ…今何時だ…?」
寝てしまっていたみたいだな、たしか天使について調べて特に情報がなくて、そっから記憶ないな。というかほっぺに何かあたって…
だんだん視界がクリアになっていく、目の前に人影が見え…
「うわぁぁぁぁああ!!!」
「うぎゃぁぁぁぁぁああ!!!」
だ、だれだ?!なんだ?!こいつはなんなんだ?!どこから入ったんだ?!
「び、びっくりしたぁー、いきなり叫んで情緒不安定なの!」
「こ、こっちのセリフだこのアマ!!」
叫んでみたけど沈黙ができてしまった、叫んだおかげで冷静になれたけどこの先どうしよう。今は見つめあっている状態だ。とりあえず殴るか?
というか暗くてよく見えないが目を見開いて驚いてるきがする。
「わ、私が…み、見えるの…?」
震えながら俺に聞いてきた。
「み、見えるも目の前にいるだろ…?」
質問に答えてやったがまた沈黙だ、というかまだ驚いてる感じだ。ん?待てよなんかさっきのセリフアニメとかでよく聞くセリフだな、確か幽霊とかが言う…。ふと天使ことネイサが最後に発したセリフを思い出した、『あ、言うの忘れてましたけど生き返るのもただじゃありません!副作用として見えないはずの生き物が見えてしまいます。なので……』というセリフだ。
もしかして……!
沈黙を破ったのは女の方だった。
「えぇーーーーーーーーーー!私が見えるのーー!?」
これはもしかしなくても確定か?確定なのか!?聞くしかないか!
「もしかしてお前幽霊だったりする?」
女のが固まる。
「そうだけど、…ってそれどころじゃないんだよ、一大事なんだよ!?マサキ気づいてないうちに死んでるかもしれないんだよ!守護霊として失格だー、腹を切って詫びますぅー!!」
腹を短刀で切ろうとしたので慌てて止めた。とりあえず今日あったことを守護霊さんに話した。
「……てなことがあったんだ、だから死んだけど生きている。」
「な、なんだってーーー!」
「うるさぁーーい!」
あまりにもうるさいから頭をひっぱたいた。女は「いったぁーい」と言いながら頭を押さえる。さっき部屋の電気をつけたから顔がはっきり見える、なかなか可愛い顔をしている。年齢は15とかそこらだろう。
さっきから疑問に思っていることを聞いてみる。
「お前さっき幽霊だっていっただろ、よくわからないんだが幽霊ってなんだ?俺が思っているものとは違うかもしれないし少し聞かせてくれないか?」
「ちょ、ちょっと待ってそのまえに少し聞いてもいい?生き返った時のことを詳しく聞かせてもらってもいい?」
「まあいいけどさっき話したことと変わらんぞ。…天使が現世に戻れって言ってきてそして戻った。」
女はきょとんとした顔で見つめる。
「それだけ?ホントにそれだけ?」
「ああ、それだけだ。」
すると女はぶつぶつと何か言い出して俺に向き直った。
「考えても仕方ない!…でマサキの質問は何だっけ?」
「…幽霊について教えてくれ。あとお前、名前は?」
名前を聞くと女はニコっと笑い名前を答えた。
「私の名前はミリミ、マサキの守護霊だよ!」
ん?なぜか聞き覚えがある名前だどこかで聞いたような、デジャブってやつかな。
ミリミは俺の守護霊らしい色々聞きたいことがあるが話の本題へ入ろう。
「で、幽霊ってなんだ?」
「幽霊はね普通の人間には見えることのない生き物、簡単に言えばそんなもんだよ。」
やっぱりネイサが言ってのは幽霊のことだったか、思っていた通りだな。
「幽霊にも大きく分けて二種類あるの、分け方は生まれ方だよ。」
「生まれ方?卵か卵じゃないか、みたな?」
「少し違うかな。人間から幽霊に生まれ変わるか、幽霊と幽霊の間に新しく生まれるか、大きくこの二つに分けられるよ。」
「お前はどっちなんだ?」
「私はたぶん前者だと思う。」
もとは人間なのか…。
「ね、ねぇマサキちょっといい?これからのこと少し話そ?例えば、例えばね…」
もじもじしながら何か話そうとしている。何なんだ?
「今までマサキに見られることもなかったから気にしなかったんだけど、私一応私ここで暮らしてるんだ…まだ私ここで暮らしていい?」
可愛らしいポーズを決めて見つめてくる。俺はこいつのことを知らなすぎる、いきなり全く知らない女と暮らすなんてハードルが高すぎる。…だがミリミからしてみれば、いつも一緒に暮らしてて文句も言わない奴に改めて『暮らしていいか』と答えの分かり切っている質問を一応しよう、そう思っているんだろう、馬鹿っぽいし。というかミリミは守護霊らしいし追い出す訳にはいかんだろう。
「まぁそれは許可するよ。それでだ、ここで暮らすときのルールを決めるぞ!」
それから一時間ほど色々と話しあった。結果をまとめるとこうだ、
・ご飯は交代制で作る
・ミリミの部屋は二階の角部屋
・掃除全般ミリミの仕事
この三点だ、細かいルールは暮らしながら作っていこう。こうして俺とミリミの生活が始まった。
「おいミリミ!お前の部屋はここじゃないだろ!」
「えへへ~別にいいでしょ~」
「よくない!」
俺の部屋でいつも寝ていたらしく私物も置いていた。だからといって俺の部屋で、しかも同じベッドで寝る必要ないと思う。ドギマギして寝れない。これは新しくルールを作る必要があるな…あきらめてソファで寝る俺はそんなことを考えながら眠りにつく。