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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
七転八倒
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3-32 シッカリしなきゃ


みのるの捜査が進展しないまま、新年を迎える。




「いろいろ有ったね。」


優しくマッサージしながら微笑む。


「クゥン。」 ソウダネ。


ジョン、ウットリ。






何も聞かされてイナイが、何か有ったのだろう。本家と分家が所有する不動産、全てに何度も捜査員が派遣された。


室内を酷く荒らされ、天井裏も調べられ、壁紙まで剥がされグチャグチャ。敷地内をアチコチ掘り返され、噴水の中まで調べられたが結果は同じ。何も出ず。



『調べるのは良いが、引き上げる前に片付けるよう』お願いした翌日、偉い人が菓子折を持って挨拶に来た。


客間に通されて直ぐ、絶句したのだから酷い。いや、警察の目から見ても異常だったのだろう。平謝りされ、修繕費は警察負担となる。


心の中で『それって税金だよね』と突っ込んだのは、幸子だけでは無い。






「ハァ。」


やっと片付いた自室で、たけしが溜息をく。


「これからドウなるんだろう。」




さとしが相続放棄していると知ったのは、あの話し合いの時。


『オレの財産は渡さない』と言ったヤツに、お爺さまが溜息交じりにおっしゃったんだ。『あの子は十歳で』と。



嫌な予感がして調べたら、花園の四人も十歳で相続放棄していた。


遺産には法律上、債務も含まれる。膃肭臍おっとせいオヤジは生活費を、花園にも一円も入れてナカッタ。




「あの時はあせった。」




智は三歳で辞書を引き、四歳で経済新聞を読み、五歳で数学を解いたバケモノだ。花丸を飼うまで、アイツの笑顔を見た事が無かったと断言できる。


荏原えばら学問所の入園面接でも、四歳児とは思えない事を言ったらしい。



膃肭臍が『アレは宇宙人だ』と言うの聞いて、『社長になるお父さまに解らない事を、たった四歳の智が言ったのか』と。


母が智を虐めるのも『当然だ』と、そう思った事を思い出したんだ。




「死ぬ前に清算しろよ、膃肭臍オヤジ。ん、短歌か。」


ちょっと字余り。




お爺さま、お婆さまも警戒なさってた。だからヤツを次期当主『候補』のまま、動産も不動産も渡さなかったんだ。



膃肭臍オヤジが失踪する前、弁護士が作成した相続放棄の書類に署名した。だから佐藤家は安泰。揉めるとしたら、ヤツの個人資産。


最後に確認されたのが銀行で、大金を引き出したラシイ。




「何を見てたんだろう。」




智は本家の次期当主。弟ではなく叔父なんだ。十歳、いや多分もっと早くに先を読み、準備するような男だ。


退院してから変わった。犬を飼うようになって、前より強くなったように思う。



まさる婿むこ入りが決まっている。勝の相手は一歳下の十四歳、山田家の一人娘。心配しなくても勝なら、婿として上手く立ち回るだろう。



問題はめぐみだ。


膃肭臍オヤジが勝手に進めていた、政治家の息子との婚約話は流れた。なのに二十代前半から三十代後半の男から、十一歳の愛に釣書が送られてくる。


それも大量に。






「シッカリしなきゃな。」


愛と母を守れるのは、僕だけだ。


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