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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第一部 悪因悪果
9/99

1-9 何度、本気で考えたか


上司を呼びに来た中堅職員も、目の下にくまが出来ている。



人も妖怪も、旅行先に日本を選ぶ理由は同じ。安いから。不法滞在者に不良外国妖怪、揃って問題しか起こさない。


『清掃屋に電話しよう』と何度、本気で考えたか。






「はぁぁぁぁぁ。」


長ぁい溜息をき、スタンプ台を開く。ハンコをポンポンしてから目を閉じ、クワッと見開いた。


「っざけんな!」


確認しながらポンポン押印する三稜草みくり。その気配は、ゾッとするホド恐ろしい。




扉を閉じ、施錠している公園に不法侵入。無許可で三夜連続、百鬼夜行。人間を入れてハロウィーンナイト? 理解不能だ。


今は初夏、盆祭りはズッと先。



そもそもハロウィーンは万聖節、十一月一日の前夜祭。


カボチャの中身をいてランタンを作ったり、子どもが魔女などの仮装をして、『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ』と各家庭を巡る。そんな祭りだろう。




「ココは日本だ、独立国だ。」


バンッ!


「本当、好きだよな。西部劇。」


だからって妖怪、特殊目明しとドンパチするか?


「抗争理由が異文化交流、異世界体験。妖怪は死なない、切り捨てゴメンって意味不明。何だよ。ふざけんな。」


ガッと受話器を取り、ピッポッパ。


「待って! 早まらないで。」


強制終了してから受話器を取り上げ、電話機に戻した。


「止めるな、諸且もろまさくん。」


「止めますよ。落ち着いてください、室長。きっとヤツらが片付けます。」






罰金を一括払いし、娑婆しゃばに出た外国妖怪たち。役所の裏口から出て直ぐ、駐車場に観光バスが並んでいる事に驚く。


出口付近にはニヤリと笑う、強面妖怪たち。その後方でアレコレ張り巡らせ、近隣住人や歩行者を守る仕置屋。その更に後ろには、未認可清掃業者がズラリ。




「皆さん、お疲れさまでした。」


ニコニコ。


「お送りします。」


ニコニコ。






『歓迎』と書かれた法被はっぴを着て、手持ち旗を振る妖怪たち。旗には『鬼丸』『八丁堀』など、屋号が書かれている。


車内から微笑むのは、選りすぐりの美男美女。モチロン人では無い。魅了されフラフラ乗車する妖怪、全てが解体工場に飛ばされる。



過激派に依頼したのは、花園組と千駄組。依頼内容は『人間の躍り食いを阻止できなかった、せめてもの慰めに』だった。


妖怪は人を守るために戦ったが、人を盾にされては本気を出せない。結果、惨敗。






「さぁさ、こちらへ。」


逃げようとする妖怪の腕を捻じり、そのまま強面軍団に引き渡す。


「ワッ、ムグムグ。」


叫ぶ前に黙らせる。




新宿御苑は名の通り、渋谷より新宿寄り。逮捕者数も渋谷より、新宿の方が多い。




ジジッ。


「こちら渋谷、作戦終了。」


ピッ。


「了解。新宿班、作戦を続行する。」




数週間後、新宿御苑『違法』百鬼夜行に加わった外国妖怪、全てが特別『失踪』妖怪認定を受けた。


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