3-24 仕上げにかかりましょう
裏で仕置や裏取する社は多いが、その大半が『浄化依頼』を受けないと公言。
一九屋は隠り世『代官所』『奉行所』は勿論、同業他社から浄化依頼が来る老舗の仕置屋。
つまり、いろんな情報が手に入る。
「育てられないなら産む前に、養子縁組先を見つければ良いのに。」
浦見が呟いた。
「膃肭臍オヤジめ。」
捨てた女を気に入って、三人も囲う? 本屋に住まわせるとかアリエナイ。
稔は死んだ。
警察がアレコレ調べるウチに『不法滞在者』とか、『外国人犯罪グループ』を検挙。メデタシめでたし。で終われないのは解るケド、まだ何かあるのカナ。
「やっと生まれた娘なのに、可愛くナイのかしら。」
佐藤 愛、十一歳。小学五年生。狙われてマス。
『李や』から情報提供を受け、水面下で進められていた婚約話を調べ上げた。
『愛さえあれば年の差なんて』と言うけれど、アレは無いわ。
性愛対象に幼女を求めるヤツ、江戸時代にも居たわよ。居たけど当時、青少年保護育成条例なんて無かったからね。
今は有るんだから、破っちゃダメでしょう。
荏原に通う箱入り娘は自家用車通学。攫うドコロか、声を掛ける事すら不可能。なのだが、男ってヤツは。
「浦見さま。ココんトコ、シワシワだよ。」
ハラスーが己の額を、右の前足の裏でポンと叩く。
「ありがとう。」
なぁでナデ撫で。
悪霊化した佐藤稔が少しづつ、町田にある佐藤本家に近づいている。
大祓ラッシュに揉まれながら、高速再生するとは思わなかった。けれど続かない。いくら悪運が強くても、闇細胞はボロボロだから。
ジョンは智の体から出て、仔犬の体に移った。性別が変わっても逞しく生きる、幸子の傍から決して離れない。
鳴海守を持たせたし、祓い石も三つある。傷だらけで脆くなった闇玉など一瞬で浄化し、清らになる。
ウチが受けたのは佐藤智として生きる魂を見つけ、馴染むまで守る事。智や幸子の親がドウなろうが関係ないが、その親たちに面識があれば動くより他ない。
「仕上げにかかりましょう。」
「ハイッ。」
コールタールのように黒く、ネバネバした闇がベタッ、ベタッと飛んでくる。その度に重くなる体を引き摺るように、前へ前へ進む。
「ギャッ。」
多摩川を越えようと近づいたら、白っぽい何かに囲まれた。この感じ、また。
「ギャァァッ。」
体が、纏わりついた黒いのが燃える!
「ダズゲデェ。」
一九屋の番犬、ハラスーは鳴海神の使わしめ。可愛いダケのワンコじゃない。
体は一つなので分割できないが、体を覆っている蛇を自由自在に操り、不可能を可能にする力を持つ。




