3-20 こんなハズじゃなかったのに
新宿署管内でワゴン車から、複数のクーラーボックスを出す外国人を発見。職務質問しようと近づいたトコロ、捜査員を付き飛ばして逃亡したので逮捕。
入っていた肉塊は豚で、人では無かった。追及した結果、畜産農家から奪った家畜を解体し、売り捌いていた不法滞在者と判明。
アジトにも大勢の不法滞在者が居たので、全員逮捕。
「殺害現場はドコだ。」
捜査員の一人が呟く。
被害者宅を調べたが何も出ず、敷地内を捜索。佐藤本家が所有する不動産、分家が所有する不動産まで調べたが、何も見つからなかった。
分かったのは被害者が膃肭臍オヤジだった事、家に一円も入れていなかった事、佐藤家の暮らしが質素だった事。
囲われていると思われた稔の愛人、四人とも佐藤家の使用人寮で暮らしていたダケで、何の援助も受けていなかった事。
「佐藤 稔の足取り、掴めました。」
DVDを手に、捜査本部に駆け込んだ捜査員。光学ドライブにセットして、スクリーンに映し出す。
「高尾山か。」
鈴木 和人が所有する高尾山の別荘は、なな何と! 最寄り駅から徒歩五分の場所にある。
見栄っ張りの和人は傾斜地だろうが旗竿地だろうが、駅近物件にしか興味を示さなかった。その結果、築年不明の古民家をゲット。
諸手続きを済ませて直ぐ更地にし、洒落た雰囲気の別荘を建てる。
ポッツン度が高いので、仕事仲間や取引先を招待し放題。佐藤稔も、その一人。
和恵と千鶴は同行したが、幸子はジョンと留守番。正確には別荘の掃除やら何やらを済ませた幸子が、和人らと入れ替わりに帰宅したダケ。
「アッ、確か。」
捜査員の一人が資料をペラペラ捲り、パンと叩く。そこには稔に『あなたの子よ』と認知を迫った、二十五人からの証言が纏められていた。
「鈴木テクノロジーの元社長、和人が所有する別荘が高尾山にあります。そこを貸し切って被害者が。」
表現に困る事をしてマシタ。
「神保美穂、高梨美智代、三谷典子の携帯に保存されていた写真の中に、鈴木家の別荘が。」
バッチリ写ってマス。
八王子署の捜査員が調べた結果、いろいろ出ちゃいました。
和人たち三人が逮捕されたのは、稔が失踪する前。いつだったか『八王子の別荘を貸してほしい』と頼まれ、鍵を渡した事があると証言。
鍵は三日後に返却されたので、無断で合鍵を作ったのだろう。
このまま一気に、と思ったが・・・・・・。
「どうなっている。」
犯行現場は判明したが、凶器や遺体が見つからない。
捜査員を増員してもダメ。『ここ掘れワンワン』を期待して、お犬様が捜査に加わった。が、ワンワンならず。
「どうなってるのよ!」
DNA鑑定の結果、生まれたのは稔の子では無いと判明。アテが外れて大荒れ。
「こんなハズじゃなかったのに。」
不仲だと聞かされていた妻との関係は良好。囲っていると聞かされた四人は愛人ではなく、子種を提供したダケ。
援助も受けてイナカッタ。
やっと幸せになれる、楽が出来ると思ったのに騙された! このままじゃ這い上がれない。許せない。




