表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
七転八倒
80/99

3-19 心強い味方


散歩から戻った佳子よしこは思い切ってみつるまこときよしに『学校でいじめられている』と伝えた。


捨てようと持ち出した証拠を見せて。




「お兄ちゃん、私ね。今日から学校に行かない。」


「うん、それが良い。」




圭は中学二年生。男だが同級生から嫌がらせを受け、ウンザリしていた。そのたびに心配になる。佳子がクラスメイトに囲まれたら、と。



集団心理は恐ろしい。一人だと『悪い事だ』と思う事でも、複数だと躊躇なく行動に移す。飢えたおおかみに襲われた子羊を、他の子羊に救い出せるワケが無い。


最悪の場合、動画を。




「一緒に受験勉強しよう。」


「充兄ちゃんも学校、休むの?」




充は高校三年生。いろいろ言うヤツは居るが皆、受験生なので落ち着いている。それでも思うのだ。もし受験生で無ければ、と。




「オレも休みたい。」


「真、お前。」




真は高校一年生。鬱陶うっとうしいホド、卑猥ひわいな事を言われている。高一男子でもコレなのに、小学生男子だとドウなるか。なんて考えるマデも無い。


兄バカと思われるだろうが、佳子は世界一可愛い女の子だ。シッカリ者なのにポワンとしていて、『お嫁さんにしたい』と思っている男が大勢いるハズ。




「佳子をめとりたくば、この兄を倒してみろ。」


・・・・・・。


「佳子ちゃん、お願い。そんな目で見ないで。」


「まこ兄ぃ、ムリ。今のはオレでも引く。」


「圭くん、ひどぉい。お兄ちゃん泣いちゃう。」


「プククッ。」


「おっ、姫が笑ったぞ。」






低血圧で早起きが苦手な啓子が、コーヒーを飲む前にシャキッとした。


佳子が『何かを隠している』と気付いていたが、こんな事になっているとは思わなかったから。


ノートは破られ鉛筆は折られ、体操服は切り刻まれて泥だらけ。教科書には太字マジックで信じられないような、恐ろしい言葉が大きく書かれている。



「酷い。」


「私たちもね、同じ事を呟いたわ。」


愛美まなみが微笑む。


「私。」


「待って、泣き疲れて眠っているから。」


明美に止められ、啓子の顔色が変わる。


「まさか!」


「違うわ、無事よ。」


真樹に言われ、ヘナヘナとしゃがみ込む。


「良かった。」




充は自由登校日だったので、自室で勉強中。真と圭は登校した。


小学校へは朝が弱くて起きられない啓子に代わり、愛美が『体調不良』を理由に欠席連絡済。




「佳子ちゃんなら大丈夫。今朝、犬の散歩中だったさとしさまに声を掛けられて、全て話したそうよ。」


「そう・・・・・・エッ。智さまが、犬を?」


真樹に背中をさすってもらい、少し落ち着いた啓子が驚く。


「ゴールデン・レトリーバーの仔犬ですって。撫でさせてもらったそうよ。モフモフで可愛かわいかったって、楽しそうに言ってたわ。」


明美がニコニコしながら、明るい声で言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ