3-11 お前はナゼ
佐藤 稔は心臓を抜かれる前、依頼主の母親が歌舞伎町のクラブ、『ぷりぷりバニーのカワイ子ちゃん』で働いていた事を知った。
だから娘より先に、その母親たちを探すだろう。数年前に死んだと知れば認知せず、名付けて別れた十三人の娘を。
娘も死んだと知れば、その骸を探し始める。
母親には戸籍が有ったが、寮で生まれた子には無い。だから手続きを経て火葬された後、角寺に持ち込まれた。
名前が書かれたメモがペタリと、骨壺に貼られた状態で。
アンナたちは角寺で供養され、悪霊化せずに旅立った。他の依頼者も、道聴寺や八十寺から旅立った。
角寺は『ど黒』、道聴寺は『野晒組』、八十寺は『曝れ頭』の長が住職を務める寺。心配ない。
問題は生者。
「稔なら妻、未亜の髪を簡単に持ち出せる。智の髪は無理でも、臍の緒なら。」
浦見が考え込む。
幸子もジョンも新しい体に馴染んだ。幸子はジョン、ジョンは幸子から離れない。二つの魂は寄り添い、輝いている。
鳴海守を常に身に付けるか、持ち歩くよう伝えたし、守護の祓い石を埋めた。予備は二つ。
後来屋が智に仕掛けた、という報告は受けてイナイ。稔から受けたのは未亜への仕置。
追加依頼を期待したのに『当てが外れた』といったコトロか。
「闇落ちするなら本屋の三人。でもね、智をドウコウするとは思えないのよ。私には。」
「はい。けれど悪霊化した的には、離れで暮らす愛人の他にも、複数の愛人が居ます。」
佐藤稔の妻、未亜が五人目を妊娠したと知り、『あなたの子よ』と認知を迫った二十五人。妊婦は別。
「悪霊化した的は恐らく、新宿から町田を目指す。その前に李社、金文屋サンにお知らせしましょう。」
「はい。」
警察からは何の連絡もナイが、弁護士からは頻繁に連絡が来る。用件は鑑定結果と、その顛末について。
現時点では稔の子は生まれていない。しかし、『そのうち生まれるのでは』と思ってしまう。
「未亜の他にも四人、自立した女性が傍にいてナゼ。」
稔の子を産んだと女が押し寄せた時、念のため未亜に検査を受けさせた。結果は陰性。
生まれたら離婚させ、稔から解放しよう。そう思ったのに流れてしまった。
「イカンな。」
勘当する時、相続放棄手続き書類に署名させて良かったと思ってしまう。
「はぁ。」
調べた限り、稔に借金は無い。しかし臓器が、内臓が全て抜かれていたと聞く。
「・・・・・・稔よ、お前はナゼ。」
茂が呟き、涙する。
豪、勝、愛の三人は未亜が五人目を流産して直ぐ、稔が所有する財産の相続を放棄。未亜が放棄したのは退院後。
非嫡出子だが認知されている充、真、圭、佳子は其其、十歳の時に相続を放棄。
愛美、真樹、啓子、明美の四人は使用人寮で暮らしているダケ。
特別縁故者では無いし、家賃だって年末に一年分、現金一括払いで家主である茂に支払っていた。もちろん新札で。
名付けたけど認知しなかった十三人。
アンナ、イリーナ、エリカ、エリス、エリナ、カミラ、ケイト、ナオミ、ジュリア、マリア、ユリア、リリス、リンダは死亡。
今のところ怪しいのは、胎に居るのは稔の子だと主張する妊婦たち。生まれたらDNA鑑定する予定だが、どうなるコトやら。




