3-9 『おじさん』ではなく
何となく違和感があったんだ。
本屋は母屋で、『母屋を渡す』の『母屋』じゃん。なのに当主の座は譲らず、別棟で暮らしている。
どちらも平屋だから、足腰ドウコウ関係ナシ。となると、残る可能性は一つ。監視。
本屋の近くに通称『秘密の花園』を建てた理由も、監視だろうね。
身元調査して篩にかけ、一次面接に合格したら身辺整理させ、二次面接に合格したら転居を認める。そんな感じ?
だって四人ともバンバン稼げる、稼いでるモン。
兄妹四人とも成績優秀。親の組み合わせが違うのに、仲が良くてシッカリ者。
「クゥ。」 オサンポ。
ショボン。
「あっゴメン。行こうか、お散歩。」
「キャン。」 ワァイ。
尻尾フリフリ。
「おはよう。」
チョッピリ眠そうな三兄弟、仲良く登場。珍しく? 早起きした愛美が立ち上がる。
「充! 大学を受験しなさい。」
笑顔でガッツポーズ。
「母さん、おはよう。」
「おはよう。じゃなくて、あってるケド。」
ブツブツ。
「どうしたの、いきなり。」
一応、話を聞く事にした。
「医学部や薬学部なら国立、他の学部なら私立でも良いわ。受験するだけ受験しなさい。」
「受験、良いな。」
「佳子も受験なさい。荏原学問所はムリだけど、中高一貫の女子校なら大丈夫。圭は公立高校ネ。」
啓子にウインクされ、圭が固まった。
「お母さん。本当に女子校、受験して良いの?」
「佳子は私に似て美人サンだから、共学より女子校の方がノビノビ過ごせるわ。」
・・・・・・。
「私もね、佳子ちゃんは『女子校向き』だと思うな。」
「でも明美さん。中・高あわせて六年だよ。」
「そうね。定期試験で学年、五十位以内なら奨学金を出すわ。モチロン給付型。」
パチクリ。
「私、佳子ちゃんの『足長おばさん』になるわ。」
キリッ。
「整った容姿をしていたり、個性的な顔立ちをした子はね、女子校に通った方が平和に過ごせるわ。共学のイザコザって九割方、男絡みだから。」
「真樹さん、もしかして。」
「中学に良い思い出は無いわね。だから私、女子高を受験したの。良いわよ、女子校。平和そのもの。」
共学の虐めはエゲツナイ。公立校はイロイロな家庭の子が通うので、イロイロな児童・生徒が集まる。
私立校は経済力があって、それなりに優秀な児童・生徒が集まるので、公立校よりマシ。
「そう、なの?」
「そうなの。私ね、今でも本気で『世界が女子校みたいなら良いのに』って思うもの。」
公立校は大量の書類を作成しなければ退学させられないが、私学なら即決。簡単に切り捨てるので、酷くなる前に解決する事が多い。
「私、中学受験する。頑張って勉強する。」
ニコッ。
「応援するゾ。」
兄たち、ニッコニコ。




