3-7 撮る必要、ある?
学所の門を出て直ぐ、尾行されている事に気付く。
豪たちを乗せた車の前後にワゴン車、左右に大型バイク。後部座席にはカメラマン。
車通学だからね。寄り道せず、まっすぐ帰るよ。
にしても何。何で被害者の家族を、子どもを追い回すの。報道の自由? 知る権利? 冗談じゃない。
前から思ってたケド、追うなら芸能人や有名人のスキャンダルじゃなく、政治家の汚職とか贈収賄とか、社会の役に立つネタにすれば良いのに。
「はぁ。」
塀を越えようとする輩はイナイと思うケド、近所じゃ有名らしいからなぁ。
「いっぱい居る。」
佐藤本家の正門前に、マス・メディアが集まっていた。庭園の警備員が二人、前に出ないようにロープを張っている。
「休園日なのに。」
特別手当、出るのかな。
学所にも大勢、押し寄せてたからネ。佐藤家にも居るだろうな、とは思ったよ。けどさ、暇なの?
「来たぞ!」
フラッシュを焚いて撮る必要、ある?
「危ないですよ。」
拡声器を手に、警備員が注意する。
豪と愛を乗せた車が通用門に向かった事を、携帯電話か無線で聞いたんだろうね。この車に『当主が乗っている』と思うのは当然。
正門から入るのは当主夫妻、次期当主、招待状か紹介状を持った客人など、限られた人だけ。
次期当主が誰なのか、知っているのは本家と分家当主のみ。
「息子さんの死について、一言!」
智クンに息子、娘も居ません。
「今のお気持ちは。」
眩しいです。
「犯人に心当たりは。」
ありません。
社交界に出られるのは十八歳。招待状が無いと入れないパーティで顔見世するのは満、十五歳から。
十三歳の智クンを知っているのは、荏原学問所の内進組。マス・メディアに情報を流す生徒は居ない。
だから必死なの? 全く理解できないわ。
「下がってください。」
注意されても、前へ前へ出ようとする。
「ロープの前に出ないでください。」
門の中から更に四人、駆け足で出てきた。
二手に分かれ、両手を広げて通せんぼ。押さえてくれている間に、ユックリ発進。門を入ると同時に、鉄の扉が閉められる。
門の内側で待機していた警備員が四人、中に入れないように通せんぼしていたので押し入れず、記者たちが悔しそうにしていた。
ちょっとスッキリ♪
「田中さん。目、大丈夫ですか。」
「はい。お気遣い、ありがとうございます。この眼鏡レンズは透明ですが、サングラスなんですよ。」
ニコリ。
「そうなんだ。」
警備員室に何か、お菓子を差し入れよう。焼き菓子が良いよね。いや、和菓子も捨て難い。
猫屋の『にゃんこ饅頭』、可愛くて美味しかった。
犬派の私をドキマギさせるとは、ニャンコながら天晴。褒めて遣わす。
「キャンキャン。」 サチコ、オカエリ。
「ジョン!」




