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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
七転八倒
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3-5 守らなきゃ


昼休み。校内放送で職員室に呼ばれ、応接室に移動したたけしまさるめぐみは泣きたいのをグッと堪え、頭をかかえる。


『やっと落ち着いたのに、勘弁かんべんして』と、心の中で叫びながら。






「信じられない。」


愛は末っ子、一人娘。蝶よ花よと育てられる。その結果、我儘に育ったが理解していた。いつか政略結婚させられる事、他の家庭とは違う事も。


「女か。」


「だろうな。」


いくら待っても戻らない父に呆れ、頼るのを止めた。豪と勝は母を愛に任せ、関東圏にある精神科病院に片っ端から連絡する。


その結果、どこも空きがナイと判明。



ベッドがくまで、力を合わせて面倒を見る事にした。けれど早早に困難と判り、金田家と花園の面面に協力要請。


豪たちが学校に行っている間は、金田家から家政婦が派遣される。敷地から出ない限り、問題ない。



「豪兄さま、勝兄さま。これからの事、ちゃんと話し合わなきゃ。」


「そうだね。勝は婿むこ入りが決まっているんだ、距離を置いた方が良い。」


「そんな!」


「学所内で会えるんだ、大丈夫。」


「・・・・・・はい。」



佐藤本家を継ぐのは、祖父母の養子になったさとし。近い将来、母と共に本屋ほんおくを出る事になるだろう。


愛は、どこかの御曹司と婚約。いや、もう内定しているのでは? 勝の時だって勝手に決めて、契約書まで用意して強引ごういんに。



考えろ、膃肭臍おっとせいオヤジが女の次に求めるのは何だ。資産家で権力を持つが、愛が不幸になる相手では無い。お爺さまが反対する、遠ざける相手との縁を結ぶハズ。


政界との繋がりは山田家で。いや、まさか。



「兄さん、どうしたの。」


「何でもないよ。勝、必ず連絡する。」


「わかった。」






「先生。家族と連絡を取りたいので、携帯電話の使用許可をください。」


校長室に呼ばれた智は冷静だった。




次期当主として調査報告書を読んでいたし、稔が『女の敵』だと知っていたから。理由は他にも。



鈴木和人と和恵の夫婦喧嘩は凄まじく、ジョンを抱きしめ耐えていた。一人なら壊れていたが、いつだってジョンが(かたわ)らに居てくれる。


そんな幸子のストレスが限界突破した結果、心の中で実況と解説をして現実逃避する術を会得。



当然、修羅場にも慣れてしまった。




「許可しましょう。」


荏原えばら学問所は高等部まで、学所内での携帯電話の使用が禁止されている。教室に入ったら、直ぐに電源オフ。電源を入れるのは門を出る前。車通学者も同様。


厳しい! という声は出ない。理由は一つ。この学所は他校と違い、特権階級の子女が多く在籍しているから。






「クゥン、キャン。」 サチコ、ハヤクカエッテキテ。


ココから学校まで、車でしか行った事ない。田中さんが出掛けたから、きっと帰ってくる。



幸子、大丈夫かな。意地悪されて泣いてナイかな。


智になったケド、男の子になったケド女の子なんだ。大きな声とか大きな音とか聞いたら、ビクッとして動けなくなっちゃう。


だからボクが守らなきゃ。


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