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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
七転八倒
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3-1 おじさま、なの?

好き勝手した稔の前に、仕置屋が姿を現した。発見された骸は酷い状態。それダケの事をしたのだ、当然だろう。しかし残された家族に罪は無い。


なのに報道陣に追い回され、イロイロと騒がれる。


稔が死んで困ったのは、囲われる予定だった三人。アテが外れて育児放棄。乳幼児の世話をしていた他の子は皆、保護されて居ない。


日に日に衰弱し、動かなくなった子らに未来はあるのか。


オッと忘れちゃイケマセン。幸子の両親、妹も仕置されますヨ。



佐藤本家が所有する不動産は多いが、本家が建っているのは町田市の端にある高台。周辺の田畑、山も佐藤家の土地。


『陸の孤島』とも言われるが、自然豊かで過ごし易い。



ガラス張りの温室には薔薇が栽培されており、たまに西洋風の茶会が開催される。香油の原料として栽培されているが、上品な香りがすると大人気。



近くに大きな川が流れてイナイので洋風庭園だが、サイフォンの原理を応用して作られた噴水がある。水源は敷地内にある、一度も涸れた事の無い泉。



小石川後楽園こいしかわこうらくえんと違い、災禍さいかや戦火をまぬがれた奇跡の庭園は個人所有。維持費もスゴイが困った事に、相続税がトンデモナイ額になる。



熟慮した結果、敷地の一部を整備して週に三日、有料公開する事が決定。


庭園内は禁煙禁酒、撮影禁止。食品持ち込み不可。違反すれば罰金ウン万円、その他もろもろ取られます。


入園券を購入する際、身分証明書の提示と日本語と英語で書かれた誓約書への署名が求められるので、『知りませんでした』は通用しない。






「ブライダル・フォト?」


結婚式場とか、教会とかで撮影するヤツだよね。何でウチの庭で撮ってんの。


「『警備員さん』って、ん。」


あの人、さとしくんのお母さんだよね。


「キャン。」 ソウダヨ。


見間違みまちがいじゃナカッタ。」






未亜みあが壊れた。


壊れたが、金田満かねだみつるの末娘である事。本家の次男、みのると結婚した事。たけしまさるめぐみの母である事。通称『秘密の花園』の事や、その住人の事も覚えている。




「こんにちは。」


ニッコリ。


「こんにちは。」


ニッコリ。




『お義姉ねえさま』なんて言ったら、きっと混乱する。そんな気がした。




「智に、叔父さま。こんにちは。」


花束を手に駆けてきた愛が、慌てて言い直す。


「『兄さま』で良いよ。」






何の本だか忘れたケド、本当の狂人は『目を見ると直ぐ判る』って書いてあった。挨拶、応答などに問題なく、常人と変わらないように見えて全く違うと。



一種の天国に居るのだろう。


キレイな花嫁衣裳を着て、薄絹のベールをかぶって、幸せそうに微笑んでいる。愛がブーケを探している間に、外に出ちゃったのかな。



花婿を探してるんだろうね、キョロキョロしている。






「良い日和ひよりですね。」


「えぇ、とっても。」


オットリとした口調で話し、小首をかしげる。


「おじさま、なの?」




未亜は智の事を忘れてしまった。


心を守るためか、罪の意識から逃れるためか。その両方か。




「お母さま、こんな所に。」


豪がいた場所からは、智の姿が見えなかったようだ。


「僕は君たちの叔父だけど、『兄さん』って呼んでほしいな。」


「はい、智兄さま。」


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