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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第二部 幸子とジョン
52/99

2-29 独り言


手渡されたのは『鳴海守なるみもり』。社務所しゃむしょで授けられる御守り、『鳴海社守袋なるみのやしろまもりのふくろ』や『鳴海社守札なるみのやしろまもりのふだ』とは別物。




「大切にします!」


通し番号つき契約者限定、譲渡不可の逸品。所有者を害そうとする存在を捕縛し、外部との接触を遮断する。


そんな神アイテムを持ったのは生まれて初めて。いや、死んで初めて。


「アッ、お風呂の時どうしよう。」


ファスナーつき袋に入れて、お弁当箱サイズの保存容器に入れて。それと念のため、丈夫なビニール袋に入れてくくろう。




コロコロと表情を変える幸子の隣で、ジョンが心配そうに鼻先を上げる。


当人は真剣に悩んでいるのだろうが、その姿が愛らしくて愛らしくて、つい見入ってしまった。




「大浴場や流れるプールなら話は別だけど、脱衣所に着替えと一緒に置いておけば、何も問題ナイわ。」


「はい、浦見さま。ありがとうございます。」



幼少時から虐待を受け続けると、自己評価が著しく低くなる。


笑顔を貼り付けるようになれば、死ぬ瞬間まで笑顔のまま。笑い方を忘れれば無表情で過ごす時間が長くなり、孤立無援に陥るか、四面楚歌の憂き目にあう。



「良かった。」



幸子のそばにはジョンが居て、離れて暮らす父方の親族から無条件に愛されていた。さとしの傍には花丸が居て、同じ敷地内に祖父母が暮らす家があった。


同居家族から虐待されていたが衣食住に困らず、名門校に通い、外出して空を見上げたり笑う余裕があった。



「すいません、もう一度お願いします。聞き取れませんでした。」


「何でもないの、気にしないで。独り言よ。」






『虐待サバイバー』。親から虐待された生き残り自ら、そう呼ぶようになったのは最近の事。


吹っ切れた? とんでもない。皆ズタズタに切り刻まれた心から血を流し、酷く歪められた魂を抱えて生きているのだ。



心を閉ざし、空想の世界に逃げ込む。悪意や敵意に曝され、感覚が麻痺する。いわれ無い非難を受けても、それを当然だと思う。


迫害され憎悪され視界が、世界が歪んで見える。



暴言を吐かれれば傷つくし、誹謗中傷されればつらい。怒鳴り声や大きな音を聞けば動けなくなり、固まったまま涙を流す。


息をするのが精一杯。それでも歯を食い縛り、何とか生きているがフと思う。


ココから・・・・・・。






「私もたまに呟いちゃいます。」


うふふ。


「あら、お揃いね。」






繁華街のド真ん中に在る鳴海社なるみのやしろには、昼夜を問わず多くの人が訪れる。


地神じがみだからね。『商売繁盛』や『縁結び』は解るケド、『必勝祈願』されても困るよ。でもね、一番困るのが『縁切り』さ。



ウチの別名、えん切り神社。『どんな悪縁も断つ』なんて言われているが、モチロンそんな事は無い。依頼内容による。


神サマ始めて長いケド、叶えられない事が多くてね。






「また来るよ。」


「はい。お待ちしてます。」


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