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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第二部 幸子とジョン
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2-25 もう許して


未亜みあみのるの妻でたけしまさるさとしめぐみの生母。武家の末裔で厳しく育てられた姑、優子と違って『蝶よ花よ』と育てられた御嬢様。


同じ箱入りでも、未亜は優しい世界しか知らなかった。






「ううっ。」



親に言われるまま婚約し、結婚した男は性欲の強い浮気男だった。


それでも耐えたが第二子出産間際、愛人との間に婚外子が居る事。その子は長男、豪より先に生まれている事を知り絶望。



男児を二人産んだのだ、認めてもらえると思っていた。なのに夫、稔が病院に姿を現したのは三日後。


掛けられた言葉は『酷い顔だな』と、『次は女を産め』だった。それから、少しづつオカシクなる。



「もうイヤ、耐えられない。」



豪を出産後、雇った乳母うばは初日に追い出された。


泣いて抗議した翌日、『良いシッターを見つけた』と連れてきた女性は、なんと稔の遊び相手。所構わずさか膃肭臍おっとせいと、略奪する気マンマンの女。



どうする事も出来ず、動けなくなった未亜を救ったのは花園寮で暮らす愛美まなみ、真樹、啓子の三人。


物凄い形相ぎょうそう本屋ほんおくに乗り込み、膃肭臍からメスを引き離して裸のまま、外へ放り出してくれた。



「・・・・・・お母さま。」



愛は知っている。未亜の心はズダズタに引き裂かれ、正常な判断が出来ない事。荏原えばら学問所の学費を全額、佐藤の祖父が負担している事。


智が叔父になった事も。



父は社長だが、本屋にも花園寮にも『一円も』入れてイナイ。家賃も生活費も愛美たちが、本屋の家賃や光熱費などは佐藤の祖父母、食費は母が出していた。


母の持参金が無くなったのが五年前。それから智兄、じゃなくて、智叔父さまが出してくれている。



「愛ちゃん、お願い。どこにも行かないで。」



智がイロイロ負担していたと知ったのは、意識不明のまま緊急搬送された数日後。冷蔵庫が空になってから。


佐藤茂、優子夫妻は憔悴し、『もっと気に掛けていれば』と呟く。



夫妻は長年、不妊治療を受けていた。


やっと授かった第一子が安定期に入ると『多くの人に知恵を授ける、徳のある人になりますように』との願いを込めて『智』と名づけた。


『男ならサトシ、女ならチエだね』と笑いながら誕生を待ち望んだ。が、死産。



「大丈夫。安心して、お母さま。学校とかは行くけど、毎日ちゃんと帰ってくるから。」



兄妹に昔話を聞かせたのは母方の祖父、太閤たいこうホールディングス社長、金田満かねだみつる


持ち株会社『太閤』の経営者一族、金田本家の長男として誕生した満と、佐藤本家の長男として誕生した茂は荏原学問所の同級生。


いつか『子ども同士を結婚させよう』と、軽いノリで約束。



『蝶よ花よ』と育てた末娘、未亜に多額の持参金を持たせて嫁に出したが二年後、好青年だと思っていた稔が膃肭臍と知り驚愕。


茂と二人で頭を抱えるも、『離婚させても未亜が苦しむダケだ』と判断。見守る事にした。



「あぁ犬が、犬が吠えてる。」



お父さまは優秀だけど、高給取りでは無い。なのに花園寮に愛人を囲い、未成年者にも手を出した。お母さまじゃなくても耐えられない。


分家で生まれた仔犬を一匹、ウチで飼うことになった。ムシャクシャして皆で虐めたケド、とどめを刺したのはお母さま。



でもね花丸、お願いだからもう許して。


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