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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第二部 幸子とジョン
43/99

2-20 私は女優


股間こかんを押さえてゴロゴロする新一を、冷たい目で見下ろすさとし。その横ですばるが腰を抜かし、ガタガタ震えている。


最初から見ていたクラスメイトも皆、固まって動けない。




「クラス委員の青柳あおやぎくん。職員室へ行き、先生を呼んできてください。僕はコレ。この二人が罪を重ねないよう、見張ります。」


「うん、分かった。」


廊下の隅にかばんを置き、タッと走って職員室へ。






「幸子、ごめんね。痛いよね。」


大丈夫よ。ありがとう、ジョン。


「でも、でもバァンって。」


ちょっと当たったケド、頬っぺれるケド大丈夫。相手の動きを察知して、それを受けるようにして倒れれば大事おおごとにナラナイの。


「そうなの?」


両親にも千鶴にも全く感謝してナイけど、鍛えられてるからネ。どうすれば早く終わるか、どうすれば軽く済むか、どうすれば逃げられるか、何となく分かるんだ。


「クゥン。」 サチコォォ。


ビックリさせてゴメンね。






被害を最小限にとどめるには、アッチに手を出させるしかナイ。


殴られ、首を締められたのは私。じゃなくて智くん。二人とも政治家の息子だから、親が汚い手を使って揉み消すんだろうね。


でもさ、幾ら激甘でも停学処分になるハズ。



先生が来たら女優になるよ。


クラッって感じでヨロッとして、壁にバンっと手をつく。そのままズルズルッとかがんで、流し目で『うっ』と言えばイチコロ。


まず保健室に運ばれ、それから救急車か先生の車で病院に運ばれる。



『念のためにCTを取りましょう』とか『二、三日ほど様子を見ましょう』とか言われ、特別室へ御案内♪






「幸子・・・・・・。」


あらジョン。女はね、生まれながらにして女優なのよ。


「そうなんだ。」


優しく撫でられ、嬉しそう。チョロいぞ、ジョン。






その後、駆け付けた教職員の前で本気を出す。目論見通り緊急搬送され、精密検査を受けた。運び込まれたのは長期入院していた、あの私立病院。


学校から知らせを受け、駆け付けた茂と優子は医師から説明を聞き、智を特別室に入れた。






「佐藤様、申し訳ありません。」


議員センセーが雁首がんくび揃え、深深と頭を下げる。


「お引き取りください。」


茂の声が、いつもより低い。


糖谷とうやさん。智は御子息に、殺されかけたんですよ。」


反撃のため一物いちもつを蹴り上げ、潰す気で踏みつけたケドね。


「蝉塚さん。御子息は謝罪したようですが、なぜ殴り飛ばされ、馬乗りで首を締められた智を助けなかったのでしょう。」


・・・・・・。


「お引き取り願います。」


優子が微笑む。が、その目は鋭い。






初等部入学直後からいじめられていた。


とはいえ、本人の前で陰口。いや、大きな独り言を執拗に繰り返すダケ。それダケでも十分悪質だが、私物をドウコウされたり、物理攻撃を受ける事は無かった。



暴行が始まったのは三年生、恐喝が始まったのは四年生の連休明け。


クラスメイトは知っていた。知っていて止めなかったのは、その相手が二人とも議員の息子だったら。党首の孫だから。



教職員は根気よく特別指導したが『ぬかくぎ』。が、今回は厳罰に処せられるハズ。


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