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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第二部 幸子とジョン
42/99

2-19 正当防衛です


三男のクセに、クソッ! 実家、それも親父宛てに送る事ナイだろう。




「おい、佐藤 さとし。カオ貸せ。」


「嫌だ、断る。糖谷新一とうやしんいち。」



新一は今平党こんぺいとう党首、糖谷 はじめの孫。父、あらたも国会議員。双子の弟、真治は隣のクラス。



「お前、自分の立場を考えてモノを言え。」


???


()せ、新一。」


クラスメイトが止めに入った。


「何だよ、すばる。」



昴は民民党(みんみんとう)党首、蝉塚(せみづか)太郎の孫。父、(つよし)も国会議員。兄、貴志(たかし)は高等部一年、在学中。



「マズイって。」


「何が。」






二人とも智のクラスメイト。


巻き上げたツモリで居たが、新一は352万4550円。昴は341万9520円の借金を背負っている。



智は最初に恐喝された時、即座に借用証書を作成。しっかり署名させた上で拇印ぼいんを押させた。


その後も借用証に署名しないと金を出さなかったので、『知らぬ存ぜぬ』は通用しない。






「佐藤くん。これまでの事、全て謝罪します。申し訳ありませんでした。」


昴が深深と頭を下げた。






昴が支払期限の翌日付で、内容証明が父宛てに届いた事を知ったのは先日、午後四時過ぎ。



携帯電話に母から『直ぐ帰れ』とテキストメールが届き、帰宅すると書斎に呼ばれた。


父から『半年間の謹慎。初めの一カ月間は自主休学させると』言われて初めて、己が『何をしたのか』に気付く。






「エッ、おい。」


「新一、君も謝罪しろ。」


「はぁ? ふざけんな!」






新一が支払期限の翌日付で、内容証明が父宛てに届いた事を知ったのは先日、夜八時過ぎ。


いつも十時過ぎにならないと帰宅しない父が、大慌てで自室に飛び込んできた。そこで初めて、詳細を知る。


どんな時も味方になってくれた母には泣かれ、父からは大目玉を食らった。


反発すれば長引くと考え『明日、登校したら智君に謝罪する』と頭を下げる。






「だいたい佐藤、お前が悪いんだ。」


謝罪する気などサラサラない新一が、左手で智の薄い肩をガッと掴んだ。


「ヴゥゥ。」 ソノテヲハナセ。


ジョンが新一と昴にダケ姿を現し、牙を剥く。


「バッ、バケモノォ。」


新一が右の拳をブンと振り上げ、ガッと殴った。


「ヴヲォ。」 ユルサナイ。


襲い掛かろうとするジョンに幸子が抱きつき、『ダメよ』と声を掛ける。


「死ねぇ。」


床に倒れた智に馬乗りになり、細い首を締める新一。しかし幸子が、渾身こんしんの一撃を食らわす。


「ヴッ。」


股間を膝で蹴り上げられ、ドサッと横に倒れた。


「ゴロズ。ギャァァッ。」


幸子は迷わず、両手をかかとけながら思い切り踏んずけた。無表情で。


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