2-14 わぁお
ん、智のヤツ。
「こらこら、先に食べるヤツがドコに居る。」
パチクリ、ゴックン。
「ココに居ます。」
タコさんウインナーを箸で挟み取り、パクリ。幸せそうにモグモグ。
教室を出ようとした時、女生徒に囲まれてしまった。紳士的な態度で接し、廊下に出たら出たでキャァキャァ言われて囲まれて、来るのが遅れた事は謝る。
がな、弟よ。幾ら美味しくても、そんな顔して食べるな。
あれ? 智の横に大型犬が見える。
ってかコイツ、こんなにパクパク食べるヤツだっか? 本当は死んで別人、異世界人と入れ替わってたりして。
・・・・・・まさかな。
「ごちそうさまでした。」
ササッと片付け、ニコリ。
「食堂へ行くぞ、智。」
「エッ。僕もう、ご飯たべたのに。」
「デザートを御馳走しよう。」
わぁい。
噂は本当だった。
神戸肉のステーキ、一万円。シェフのオススメ、一万五千円も完売してる。何をオススメしたら、その値段になるの? 学食の定食だよね。フルコースなのかな。
「智、早く決めろ。」
「はい。えっと『季節のフルーツタルト』、三千円?」
ホールケーキじゃナイよね。文久堂の高級フルーツとか、北海道の高級バターとか、搾りたて牛乳とか使っているのかな。
一切れ、どれくらいの大きさなんだろう。
「飲み物は紅茶で良いか。」
「はい。」
紅茶、千五百円?! ぽぽ、ポットで出てくるのかな。ドキドキ。
内進組の食堂には、特別室ってのが在るんだヨ。広さは十畳くらい。丸いテーブルに椅子が四脚。部屋の隅に二脚、並べて置いてある。
ホテルのレストランの給仕係みたいな人が、ワゴンに載せられた料理を静かに置いて、一礼してから退出。
ココ、学校だよね。学校の食堂だよね。
真っ白な器に盛り付けられた、直径十㎝ほどのフルーツタルト。お値段、三千円。お高そうなカップに注がれたアールグレイの紅茶、一杯千五百円。
〆(しめ)て四千五百円。わぁお。
「いただきます。」
フォークがスゥっと入った。一口大に切って、パクリ。
「フゥゥン。」
し・あ・わ・せ。
豪と愛は『シェフのオススメ』を四人分注文して、特別室で待っていた。十分待っても到着しなかったので、仕方なく先に食べ始める。
つまり、食事してイナイのは勝だけ。
智の分は、豪と勝が半分こ。デザートは愛がペロリ。
会話しながら食事するなんて、三人とも器用だな。と思いながら『季節のフルーツタルト』に舌鼓を打つ。
「聞いているのか、智。」
幸せそうに食べる智に、強く言えない豪と勝。
「はい。これまで同じ車で登校していたのに、一人だけ違う車で来た。勝さんは良いけど僕は違う。」
ゴックンしてからスラスラ答える。
「そうだ。これが何を意味するのか、考えるまでも無いだろう。」
多分、ずっと前から虐待を疑われてたんだね。と思いながら紅茶を味わう。うぅん、美味しい。




