表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第二部 幸子とジョン
31/99

2-8 情報ダダ洩れ


佐藤 さとしの体に、鈴木幸子とジョンが入る事になった。ジョンが入れる体が見つかれば、智の体から出る事になっている。




「・・・・・・ここは。」


病院だよね。やたら広いし豪華だし、応接セットが置いてあるケド、心拍数? 『ピッピッ』ってのが動いてる。


「あぁ、わかった。不祥事を起こして雲隠れする、議員センセー御用達の特別室ってヤツだ。」


お庭より、ちょっと広いかな。


「そうだね、ん。」


ん。


「ジョン?」


なぁに、幸子。


「こっ、言葉が解る。通じてるぅぅ。」






バタバタバタ。ザァッ!


「佐藤さん、佐藤智さん。わかりますか。」


特別室で大騒ぎした事で、看護師が飛んできた。


ナースステーションまで聞こえたワケでは無い。近くを通りかかった看護師が気付き、駆け付けたのだ。


「ドクター呼んできて。」


「ハイッ。」


そっか、智クンの体で生きる事になったんだ。私。


「佐藤さん。」


「はい。」






智が救急搬送されたのは某、医療法人の救命救急センター。


救急隊が現場に到着した時には、意識不明の重体。処置室に運び込まれて直ぐ、心肺停止。何とか持ち直したが意識が戻らず、一年経過。



内臓破裂に肋骨骨折。大腿骨と寛骨かんこつびひが入り、アチコチ痣だらけ。それも全て、服で隠れる場所に集中している。


残酷な待遇を受けていた事は明らか。


医療関係者から『虐待の疑いアリ』と通報を受け、警官が二人来た。が、上からの圧力により退散。



一泊ウン十万の特別室に入れたものの、意識が戻ればドウなるか。本屋組は気が気でなかった。


本気で心配し、回復を願ったのは本家当主夫妻。茂と優子の二人だけ。






「私立病院の最上階、特別室って本当に在ったんだね。議員センセーになった気分だよ。」


パクンとバナナを食べ、モグモグごっくん。


「さすが文久堂ぶんきゅうどうの高級フルーツ。濃厚で美味おいしい。」


パクン。モグモグ、モグモグ。




「房総半島沖で発見された、身元不明死体についての速報です。DNAと犬の首輪に付いていた鑑札から、東京都世田谷区在住、鈴木幸子さん十四歳。犬は鈴木家の飼犬、ジョンと判明・・・・・・。」


パチクリ。


「鑑札つけたまま遺棄したの?」


そうみたい。


「ってかさ、個人情報ダダ洩れなんだけど。」


もっと良いの、使ってよね。


「うん。証明写真は無いわ。」


幸子は優しくて、あったかいモン。あんな冷たくナイ。


「幸子さんはジョンと散歩に出たまま消息不明となり、家族から捜索願が出されていました。警察は何らかの事件に巻き込まれた可能性があるとして、世田谷署に捜査本部を設置・・・・・・。」






遺体は古いカーペットとテントに包まれ、おもりを付けて海に遺棄されたと思われる。


血染めのカーペットは、お値段以上の量産品。テントも、身に付けていた品も全て。



女性の顔は潰されており、歯の治療痕から辿るのは困難。反対に、犬の身元は直ぐに判明。


首輪に付いていたロケットに、緊急連絡先を書いた紙がパラフィンに包まれ、入っていたから。



放送終了後、多くの愛犬家が涙した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ