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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第二部 幸子とジョン
28/99

2-5 よくやった


幼児虐待、児童虐待も増加の一途を辿たどっている。


虐待の世代間連鎖も深刻だが、それダケでは無い。核家族化が進み、子が子を産んだ結果、愛着障害を抱えて苦しむ者が増えた。






「はじめまして。る時は悪神あくじん鳴海神なるみのかみ。また或る時は一九屋いくやおさ、浦見。その実態は! 悪鬼あっきデス。」


・・・・・・。


「鈴木幸子さん、鈴木ジョン君。あの環境下、最期まで諦めず生き抜いたんだ。立派だ、誇れ。よくやった。」


ウルッ。


「ジョンが居てくれたから、私。」


「クゥン。」 ボクモダヨ。






日本は長い歴史と成熟した文化・風習を有するが、資源に乏しく貧しい国だ。



いろいろ有って大きな戦争が続き、引くに引けずボロッボロ。


けれど敗戦後、奇跡的に経済成長した事で不景気を脱す。以後、十五年ほどに渡って著しい経済成長を遂げた。


高度経済成長期の到来! ヤッホィ。



貧しかった国が『急に』世界屈指の経済大国へと上りつめたらドウなるか。


『欲しがりません、勝つまでは』が『二十四時間、戦えますか』に変換され、豊かだった心が貧しくなり民度が低下。


良くも悪くも『コウと決めたら突っ走る』国民性が出てしまった。



ブレーキではなくアクセルを踏めば? 考えるまでも無いだろう。


日本経済は実質を越えた拡大を始め、株価と地価が際限なく膨れて大きくなる。実体を伴わない上昇を始め、パチンと弾けて日本経済に深刻な打撃を与えた。


所謂いわゆる、『バブル経済の崩壊』である。






「あぁ、聞いた事があります。」


『順を追って話すから、最後まで聞いてネ』と言われ、素直に従っていた幸子が口を開いた。


「アッチでもコッチでも大騒ぎ! 依頼殺到で目が回る忙しさ。倒れるかと思ったよ。それはさて置き、その荒波を乗り切った一人が佐藤商事会長、佐藤 しげる。」


酒は付き合いで飲む程度、自他ともに認める愛妻家。投資の才能アリ。


「茂を公私ともに支えたのが妻、優子。」


良妻賢母で社交的だが、家事に手を抜かないスーパーウーマン。


「茂と優子の次男、(みのる)は佐藤商事社長。優秀だが女癖が悪く、認知済の非嫡出子が四人。」


ゲッ。


「稔の妻、未亜みあは『蝶よ花よ』と育てられ、親に言われるまま結婚した箱入り娘。」


うわぁぁ。


「稔と未亜には息子が三人、娘が一人。長男のたけし、次男のまさるは容姿端麗、文武両道。三男のさとしは予備の予備。粗略に扱われ、同居家族から日常的に虐待を受けて育つ。」


目の前で愛犬、『花丸』を撲殺されるのを見て笑えなくなる。


息をするのが精一杯。生きるのが辛くて苦しくて、逃げるように投機取引に手を出した。


「智に投資の才能が有るのを知っているのは祖父、茂だけ。秘密にしている理由は、家族に搾取されるから。」


泣きながら画面に向かう孫、智を見て心を痛めた老夫婦は、倅夫婦に何度も厳重に注意する。けれど効果ナシ。引き取って育てようか、という話が出た。


一方、智は幾ら稼いでも満たされず、花丸を思って涙する日日。


癇癪かんしゃくを起こした未亜が帰宅直後の智を捕まえ、防音室に放り込んで折檻せっかん。帰宅した勝が気付き、慌てて救急車を呼んだ。治療の甲斐かいなく現在、待機中。」






死ぬ気マンマンの智はスキップしながら虹の橋へ行き、大好きな花丸と涙の再会。思う存分、戯れた。それから隠り世代官所、虹の橋支部に出頭。


裁判を受けるため、申請書を提出する。



直ぐに飛んできたのは隠り世代官所営業部、特別班相談係長の桜だった。


代官所のエースだよ、エース。


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