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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第二部 幸子とジョン
27/99

2-4 もう昔には戻れない


アワアワする幸子に頭をグリグリし、落ち着かせようとするジョン。




向日葵ひまわり。」


朱里あかりが呟く。


「えっ。」


「アッ、すいません。人間だった時に飼っていた犬が、ジョン君と同じゴールデン・レトリーバーで。ウチのは女の子でしたが、その。思い出してしまって。」


でますか?」


「良いんですか?」


「はい。良いよね、ジョン。」


「ワン。」 ドウゾ。






朱里は鬼だが、昭和生まれの人間だった。


外面だけは良い毒親は長男教。偏愛されて育った妹は、加虐趣味を持つ問題児。そんな家族に虐待されて育ったが、飼犬の向日葵だけが味方だった。


その向日葵をかばって頭蓋骨陥没、および臓器損傷により死亡。



命がけで守った向日葵が保健所で殺処分されると知り、愛犬家の夢枕に立って里親を探し回った。


結果、近所の山田さんが引き取ってくれることになり一安心。直ぐ地獄行きを決意するも、悪霊化しており門前払い。


途方に暮れていた時、山田さんの親族に不幸があった。



息子一家が強盗、それも外国人窃盗団により惨殺されたのだ。



心配になり駆け付けた朱里に、山田さんは『息子たちのかたきを討ってほしい』と懇願。向日葵を一生大切にする事を条件に受託し、強盗を皆殺しにした。



帰国後ボンヤリしていたらハラスーに保護され、鳴海神なるみのかみに『よくやった』と頭を撫でられ浄化される。


地獄裁判を受け、転生するのではなく『一九屋いくやに就職したい』と直訴。採用され現在、修行中。






「向日葵ぃ。」


ジョンに抱きつき、オンオン泣いた。






最後に向日葵の姿を見たのは帰国後、山田さんに報告しに行った時。悪霊化していたので近づけず、門扉の前で別れた。


浄化後は地獄で服役していたので、向日葵の最期を看取る事が出来なかったのだ。



就職後、同僚に何となく話していたら『会いに行きなさい』と言われビックリ。


おさから『特別通行証』と有給休暇を貰い、虹の橋に行ったが『向日葵は転生したよ』と聞かされ脱力。



転生した向日葵はキャリアチェンジし、パピーウォカーに引き取られて幸せに暮らしている。


今の名前はソレイユ。『向日葵』を表すフランス語です。






「ありがとう、ジョン。」


「ワン。」 ドウイタシマシテ。






ハラスーは朱里が泣き止むまで何も言わず、寝そべって見守り続けた。何となく、このまま泣かせた方が良いと思ったから。


ハラスーは前世も、そのまた前世もケルベルスの一体として、死ぬまでバリバリ働いていた。今は一九屋の番犬だが、同時に鳴海社なるみのやしろの神使でもある。


優しく撫でられるのも、可愛がられるのも今世が初めて。もう昔には戻れない。






「朱里、そろそろ話そうよ。」


「アッ、そうね。ありがとう、ハラスー。」



犬でも猫でもケルベロスでも、尾は正直だ。三匹のコブラがユラユラ揺れて、今にも歌い出しそう。



「鈴木幸子さん、ジョン君。私たちと一九屋に来てください。」


ニコッ。


「悪い話じゃナイから、安心してネ。」


『ハラスーと愉快な仲間たち』もニコリ。


「えっと、はい。うかがいます。」


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