1-22 ご利用は計画的に
歌舞伎町と秋葉原の現場から押収した、全ての品を調べ終えた愉快な仲間たち。揃ってゲッソリ。
出てきたのは被害者の遺品、証拠写真に証拠映像、帳簿や名簿など、表では扱えないモノばかり。
「警察省妖怪犯罪局? ふざけるな。」
ふざけて無いよ。
「警視庁妖怪犯罪捜査一課って君、正気か。」
正気だよ。
動かぬ証拠を突きつけられても、鼻で笑って追い払う議員センセーは知らない。
妖犯も妖一も現地採用された人間で、権力も圧力も通用しない事。職権無効、事実の隠蔽など以ての外。忖度もシナイ事などナド。
「・・・・・・仕置屋を呼んでください。」
弁護士を呼ぶノリで、仕置屋を呼ばないで。
「至信公告に依頼を。」
御指名ですよ、鬼丸サン。
鬼丸は金さえ積めば、どんな依頼も受ける仕置屋。
鬼丸グループには永田町御用達、山王社。裏取りはするが証拠を捏造し、追加料金を請求して依頼者を破産させる怨霊組。裏取りはするが杜撰で、権力者からの依頼を中心に受託する八丁堀。
他にもイロイロ。
代議士や官僚、特権階級の中にも『仕置屋の存在』を知っている者は居る。妖犯や妖一が動く時は、確たる証拠を妖怪に握られているのだ。
決して逃げられない。
「素直に従った方が良いですよ。」
仕置されちゃうヨ。
「ご利用は計画的に。」
根こそぎ奪われるヨ。
隠り世認定企業が人の世で暗躍している。味方につけると心強いが、敵に回ると厄介なのが『仕置屋』『清掃屋』『裏取屋』。
妖怪は一度 受けた仕事は、どんなに時間が掛かっても遣り遂げる生き物。
つまり今回の事、『人の世で活動する妖怪の大半が関わっている』と言っても過言では無い。
「歌舞伎町と秋葉原で明らかになった、外国人犯罪グループによる大量殺人の続報です。押収品から被害者の身分証が発見され、捜索願が提出されていた事が判明しました。」
デズモンド・リッパーは性愛の対象に幼女、少女を求める異常者だった。日本に狙いを定めたのは、児童ポルノ天国だから。
三か月から半年ごとに出入国し、新宿の北で屯する通称、新北キッズを誘い出し暴行。それをジャック・コールマンに見つかり、体を奪われる。
外国妖怪による人間の踊り食いを計画し、国内の有料公園やテーマパークで実行。日本を選んだ理由は二つ。
失踪者が多く、死体が出ないと警察は動かないから。
秋葉原で発見されたウラジミール・オネガは、デズモンドより質が悪い。
新北キッズに『安全な宿泊先を紹介する』と言って近づき、アジトで輪姦。それを撮影して脅迫し、客を取らせ続けた。
生存者は居たが罹患率100%。直ぐ都内の病院に運ばれたが、どうにもナラナイ状態。名古屋や大阪、福岡など、他のアジトに警察が踏み込んだ。
結果は同じ。
「罪を犯した妖怪は処分したけど、死んだ人は戻らない。依頼されなきゃ動けないのは、仕置屋も同じよね。でも政治屋! 外国に気前よく散蒔く前に、国民を守る事を考えなさい。」
テレビに向かって説教する浦見。
「輸出? された子、死んじゃった。」
ハラスーが項垂れる。
知らせを受けて駆け付けた親が、遺体に縋って泣き叫ぶ声が耳から離れない。




