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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第一部 悪因悪果
21/99

1-21 悪い事をすれば


闇にも毒にも強いハラスーの後ろで、ドラが翼を動かしている。傍らに控える鴉虎あこは交代要員。



火加減が難しいが、ハラスーは神使。ドラは窆氶寺へんじょうじに併設されている、大きな荼毘だび所の焼き師。


火力調節など、お手の物。






「ギャァァァァァァァァァァ。」



妖怪が持つ不死の力は脆く、短期間に繰り返し使用すれば劣化する事が近年、隠り世で明らかになった。


再生速度が下がれば、それだけ痛みや苦しみが続く。再生しなければ死ねるのに、自動再生されるから死ねない。



「おや。」


鴉塟あそうがポツリ。


「こわい。」


アニスが鴉塟の後ろに隠れた。




ジャックと違い、デズモンドには肉体が有った。その魂はジャックに食われたが、浄化柱に入った事で戻る。


つまりジャックより、デズモンドの方が長く苦しむ。



眼球は角膜と強膜から成る外膜。虹彩、毛様体、脈絡膜から成る中膜。網膜から成る内膜によって壁が構成され、その中には水晶体、硝子体および眼房水で満たされている。



強火で焼かれ、不死の力が発動。完全再生前に焼かれ、不死の力が発動。また焼かれ、不死の力が発動。


コレを繰り返せば当然、水分量の多い部分が不完全になるがそもそも、人類の体重の60%は水分。体液量は年齢と共に変化し、新生児で75%ほど。




「人も妖怪も悪い事をすれば、必ず罰を受けるんだよ。」


鴉塟がアニスを抱き上げ、優しく諭した。






「マジかよ。」


妖怪犯罪捜査一課に勤める狐憑き、佐久蘭望さくらんぼう。通称、本庁のチェリーが呟く。


「何を見つけたんですか。」


新宿区役所妖怪対策室、諸且もろまさが問うた。


「これ。」


チェリーがミカン箱から見つけたのは、ズボンを下ろした男が女を襲う写真。組み敷く写真。穢す写真。


「若いな。高校生、いや中学生か。」


諸且の顔が険しくなる。


「この子じゃないか。」


対策室長の三稜草みくりが、閉じられる前のダンボール箱から手帳を出した。


挟まれていたシールに写っていたのは、露出の多い服を着た少女。一緒に写っているのは有望視されている、今平党こんぺいとうの若手議員。


「佐久さん。揉み消さず、公表してください。」


・・・・・・。


「仕置されますよ。」


花園組のおさ喜兵衛きへいが囁く。




人と妖怪が協力して、押収品をセッセと運び出す。運搬先は警察ではない。


歌舞伎町の現場から押収した物は、新宿区役所別館の特別室。秋葉原の現場から押収した物は、渋谷区役所別館の特別室へ。




「これだけの量だ。『一つや二つ』と思ってるんでしょう? 甘いですよ。現場を仕切ってるのは妖怪、人間じゃアリマセン。」


ハッ!


「解ればよろしい。」


特別指定妖怪団体の長が微笑む。が、その目は冷たい。






歌舞伎町の現場も秋葉原の現場も、人間より妖怪の方が多いのは当然。見える人が少ないから。


けれど一番の理由は、証拠隠滅させないため。


どんなに時間がかかっても必ず家族、親族の元へ送り届ける。そのために警察を監視している、と言っても過言ではない。


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