1-20 浄化柱
鳴海札は使い捨て。小札、大札、紫藤札の三種類ある。
小札は短冊状の紙片、大札は鳥居が描かれた厚紙。極めて高い強度を誇る紫藤札は、大祓や浄化壁の蓋に最適。
何れも使用時に発光し、対象を浄化する優れモノ。
「ギャァァァ。」
浄化柱の中で七転八倒するジャックとデズモンド。合体すれば逃げられると思っていたのに、待っていたのは断末魔の苦しみ。
光の壁に何度も体当たりし、破ろうとするがビクともシナイ。地にも天にも、触れた瞬間にジュッ。浄化柱をボボボンと弾み、勢いを増す。
「アァァァァァ。」
融合したジャックの魂からニョキっと、触覚のようなモノが生えた。ソレを壁面にバンバン叩きつけ、打ち破ろうとする。
表面に苦痛に歪む顔が現れ、口をパクパク動かし始めた。何を言っているのかサッパリ分からないが、酷く罵っているのだろう。
デズモンドも同様。物凄い形相で壁面を叩き、肩から体当たり。その度に悲鳴を上げ、喚き散らしているのだろう。
浄化柱は透明なので分かり難いが、厚さは約30㎝。柱内の音が外へ漏れる事は無い。
壁、床、天井に当たればジュッジュと焼かれ、煙が出るのに大暴れ。
ジャックは魂ダケだがデズモンドは違う。皮膚が爛れたりベロンと剥げ落ち、肉は焼け、骨が見えている。
どす黒い闇が充満し、揃ってハクハクし出した。ジャックは弾む速度が落ちたが、動きを止める気は無いらしい。まぁ当然か。
壁面のアチコチに、ペタペタつけられた跡。その全てを合わせても、奪った人命の数には及ばない。
ジャックもデズモンドも女性を穢し、飽きるまで嬲って楽しみ殺すために来日。
不死となった事で神格化したと思ったのか、何をしても許されるとでも思ったのか、罪を重ね続けた。
無限地獄に落ちる事が決まっているが、この世でも絶え間ない苦しみを受けさせる。徹底的に。
「ハラスー。」
「はい、浦見さま。いつでもイケます。」
ハラスーの胴から生えている蛇はクサリヘビ、ユウダなど十三科、約二千七百種。
神話・伝説などに多く登場し、神の使いとしても崇められる一方、執念深く、気味が悪い生物として恐れられる蛇さんズ。
常日頃から浦見に撫でられる事で、特別な力を得る。
ピョンぬるクネクネ、ピョンぬるクネクネと繋がり、アッという間に一本の道を作り出した。
「ドラちゃん、お願い。」
「グルッ。」 ハイッ。
ハラスーと共に浦見の近くに控えていたドラが、大きく息を吸ってクワッと見開く。吸い込んだ空気を腹に落とし、ペコンと凹ませた。
ボッと出た火炎球が、蛇の道を通って浄化柱の中へ。
「ア゛ァァァァァ。」
三分の一ほど溜まった闇溜まりは、瀝青炭のように光沢のある黒色。火種がポトリと落ちた瞬間、煤煙の多い炎を発して燃焼。
密閉空間だ。空気を燃やし尽くせば鎮火するが、この浄化柱は紫藤札を用いた特別製。蛇の道から酸素がポコポコ送られ、ボウボウ燃えても大丈夫。
浄化終了まで消滅しない。




