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一線  ~譲れないもの~  作者: 醍醐潔
第一部 悪因悪果
18/99

1-18 遺品だけでも


新宿区役所の妖怪対策室長、三稜草清明みくりせいめい陰陽師おんみょうじ末裔まつえい。見えないモノが見えるが、しきを従える事は出来ない。


黙黙とむくろの写真を撮り、白いテープでマーキング。転がっていた酒瓶にグラス、灰皿を撮影中。



ちなみに歌舞伎町の現場は花園組、新宿区役所妖怪対策室、警視庁妖怪犯罪捜査一課。秋葉原の現場は千駄組、渋谷区役所妖怪対策室、警察省妖怪犯罪局が担当。


大捕物おおとりもの最中さいちゅうだから』と破落戸ごろつきがオイタしないよう、仕置屋がシッカリ見張ってマス。






「悪太郎さん。まとの移送、お願いします。」


「はい、お任せください。」




おさ鴉塟あそうがシュパッと、魂を切り離した。ソレを死神ファイルに入れ、ふところに仕舞う。


妖怪たちが姿を見せているのは、ウッカリ映り込むと心霊写真になるから。応援に駆け付けた傍引おかひき強面こわもて軍団も同様。




「ハラスーさん。むくろを屋上に、お願いします。」


「はい。」


ガブガブガブっと甘噛みし、クイっと持ち上げタッタッタ。屋上で待機していた鴉虎の前に、スッと下ろす。


「お願いします。」


「はい。」


回収用の大袋に入れ、ゴロンと転がし紐を巻く。


「ドラ、先に行くね。」


「ガウ。」 ハイッ。




ドラは悪太郎の納め師。


その昔、鴉虎あこが拾ってきた卵を孵化させた新種の飛竜。翼と爪を持つ爬虫類で、口から火を吐くが小柄。鴉虎を親だと思っている。



鴉虎は鋭い牙と爪、自在に飛べる翼まで持つ猛獣。



半妖のジャックは人の目でも見えるが、その骸にはタップリと、ハラスーのコブラ毒が入っている。まだ明るいが、人に見られる事は無い。




「ドラちゃん、大きくなったわね。」


「クルルゥ。」 エヘヘ。


浦見にナデナデされ、嬉しそうに頬を寄せる。


「浦見さま、そろそろ。」


「そうね。ハラスー、いらっしゃい。」


「ハイッ。」




ハラスーは元、冥府の番犬。跳ねる事は出来ても飛べません。だから朧車おぼろぐるまを利用します。


一九屋いくやの朧車は、漆塗りの牛車。ながえくびきを支えるしじには、藤の花が描かれている。動力は妖力、牛ではナイ。


車内は広さ十畳ほどで、ハラスーが乗っても大丈夫。




「クゥン。」 シアワセ。


浦見に撫でられ、ウットリするハラスー。コブラたちもユラユラしながら、空の旅を満喫中。






新宿から、窆氶寺へんじょうじが在る奥多摩まで離れている。だから浦見は移動時間を利用して、朱里あかりから渡された簡易報告書に目を通す。


その内容は、思わず頭を抱えたくなるホド酷かった。



『失踪者』では無く『犯罪被害者』だったのだ。


公表するのは当然だが、『犯人は妖怪でした』とは言えない。複数の仕置屋が目を光らせているから、揉み消せばドウなるか解っているハズ。


それでも考えてしまう。今回の事件は大き過ぎる、と。



隠れで押収した品、全て被害者の遺品だろう。その大半が身分証明書。あのダンボールの数から、少なく見積もっても数十年分。


いつか帰ってくると信じ、待ち続ける者。中には鬼籍にる者も。それでも可能な限り、遺品だけでも家族の元へ、送り届けたい。


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