1-17 どこかに必ず
新宿御苑に餌を集め、夜通し騒いで食い散らかす予定だった。なのに開始早早、問題発生。食い足りないぜ。
隠り世は呆れるホド厳しく、チョットの事で逮捕される。一応裁判は受けられるが、外国妖怪でも極刑に処する狂った世界。
対して人の世はザルだ、と聞いていた。
ドコがザルだよ! 罰金とられてハイ御終い。そう思ったら組事務所に連れて行かれ、問答無用で拷問漬け。
「ハァ、疲れっ。」
無数に伸びる闇の手がデズモンド・リッパー、本名ジャック・コールマンを捕らえた。
「離せぇ。」
両手両足、頭も違う方向に引っ張られ、千切れそう。
「止めろ。」
ビキッ、ビキビキビキッ。
「ギャァァッ。」
手足の付け根と首の左右にガブリと、三匹のコブラが噛みついた。
「アッアッアッ。」
コブラの毒は神経毒で、呼吸中枢を麻痺させる作用を持つ。幾ら不死身でも、息が出来ないのは辛い。
ハラスーがジャックを仕置している間、朱里は防護服を着てマスクと手袋を装着。アジトの捜査を開始する。
開きっ放しのダンボール箱に入っているのは、被害者の物と思われる学生証や運転免許証。髪飾りや腕時計、電池切れの携帯電話など。
「コレクターなら一目で判るよう、整理しなさいよ。」
箱の側面に年号を書いた紙を貼るとか、目録を作成するとかイロイロあるでしょう。
「応援、呼ぼうかな。」
部屋の床から天井まで、ギッシリ積まれているのは古いダンボール箱。内扉は全て外され、遺品が入っていると思われる箱で埋め尽くしていた。
「二十年前、東京タワー。看護学生三人。相田香織さん、橋本佳苗さん、山本洋子さん。」
髪皮屋の表、菊の湯に来た生霊は橋本明子さん。一人娘が姿を消し、夫にも先立たれ、長男一家と同居中。
「どこかに必ず、佳苗さんの遺品が入っている。」
入院せず、自宅療養を選択したのは佳苗さんが『ただいま』って、帰ってくるカモしれないから。
「朱里、お待たせ。」
「伊都さん。」
「お巡りサン、連れてきたよ。」
「玉緒さん。」
「チェリー&ピーチ、働け!」
「初音さん。」
伊都、玉緒、初音も一九屋の匠で、三妖とも鬼。伊都は旗本の娘、玉緒は子爵令嬢、初音は伯爵令嬢だった。
元お姫サマですが、何か?
「警察の皆さん。解っていると思いますが、一つでも勝手に処分したら仕置しますので、ヨロシク。」
一九屋の長、浦見参上。
「ハッ。」
お巡りさんズ、敬礼。
「三稜草さん、写真撮影お願いします。ハラスー、的をコチラへ。ソファの上が良いかしら。」
浦見が悪太郎の長、鴉塟に相談。
「そうですね。『ソファの上で痙攣して、ずり落ちた』という感じにしましょう。」
悪鬼と霊鬼、揃ってノリノリ。
「秋葉原の方は、どうなったのかしら。」
「髪皮屋と後来屋が見張ってますヨ。」
サラッと恐ろしいコトを言う長たち。妖怪対策室員など、見える人は慣れているのでヘッチャラ。




