1-15 被害者も同じ事を言ったハズだ
奉行所に行き、いろいろ判った。
一つ。髪皮屋からの浄化依頼書に添付されていた闇。
太閤ホールディングスの中堅社員から採取されたソレは、デズモンド・リッパーのモノだった。
二つ。添付されていた闇と、古い闇の分析鑑定依頼。
共通点は多いが別物と判定を下したが、同一妖怪の物と判明。他の妖怪を食らうか取り込むかして、妖気を上書きしたと思われる。
三つ。闇の源は明治時代、お抱え技師として来日したジャック・コールマンと判明。
ジャックは逮捕される度に自殺。大使館員に憑依して出国し、数年後に再来日。同じ過ちを犯して自殺。他の大使館員に憑依して出国し、数年後に再来日。
コレを繰り返す事十三回。
四つ。妖怪出入国記録に無かった理由は入国時、デズモンド・リッパーが人間だったから。
「妖力分析鑑定機って凄いね。」
「うん。」
と答えたものの、浮かない顔をするハラスー。
ジャック・コールマンは死亡する度、白人種に乗移って出国。融合しなければ引っ掛からない事を知っていたか、全くの偶然か。
いつ不死になったのかは不明だが、ジャックは変身能力を持っていた。デズモンドの前、ブライアン・パーカーの出国記録が無い事から、
日本国内に潜伏していたのは確かだ。
「ねぇ朱里。たった二か月で、あんなにドロドロになるかな。」
「生きたまま食らわなければ。いや、それにしても。」
「でしょう? 離れてたから断言できないケド、軽く千は超えてるよ。」
「毎日一日、十七体以上・・・・・・。直ぐに戻ろう。長か番頭に報告してから、妖怪対策室に。」
「そうだね。」
プクク、この国の妖怪は甘いな。オレ様が不死だと、変身能力を得たと知らない。闇さえ残っていれば何度でも、どんな姿にもなれる。
さぁて、そろそろ。ん。なぜだ、どうなっている。妖気を通さない容器など、袋など在るワケが無い。なのにナゼ破れないんだ。
「違う! 再生できないんだ。」
「へぇ、もう気付いたの。」
鴉虎が微笑む。
悪太郎の長で窆氶寺の住職、鴉塟は引退した死神。鴉虎は相棒。その爪には死神の鎌と同じ、魂を狩る力がある。
魂を一時保管するファイルも、鴉塟の力が込められている特別製。
「出せ、助けてくれ。頼む。オレに出来る事なら何でもするから、だから助けて。」
身動き出来ない魂が、恥じも外聞も無く命乞い。
「被害者も命乞いしたハズだ。」
そう断言し、首から提げたポシェットに袋ごと入れた。
「戻る前に知らせよう。」
新宿区役所、妖怪対策室へ。
悪太郎は清掃屋。隠り世には『回収および廃棄物処理』で届けている。
処理方法その壱、暴食獣アニスの血肉となる。その弐、小型飛竜ドラの血肉となる。その参、焼却処分される。以上。
勿論、選べない。
「こんにちは。斯く斯く然然でデズモンド・リッパーの協力者、ダミアン・ジョーンズの魂を切り取りました。骸は秋葉原の廃屋に転がってマス。」
鴉虎はニャっと笑い、尾の蝮は頭を上げる。
「エッと、はい?」
端折らずに順を追って、説明してください。




