1-12 ですよね
半妖とはいえ不死身の妖怪。処分法は限られる。
窆氶寺に呼び出し浦見、螢、燃旗が一線を引き浄化。回復する前に最大火力で『強化葬』。コレしか無い。
「その前に協力者を締め上げ、秘密や悪事を白状させなければイケマセン。鬼手が足りなければ、ん。皆さん、どうされました?」
妖怪対策室の愉快な仲間たち、揃って真っ青。
「青白さま。生き残った人間は皆、心的外傷により精神崩壊寸前です。先ず、そちらを。」
「わかりました。」
青白は『精神的外傷に苦しむ人を救う』ため、『赤目』を結成した妖蛇。桃山時代から今まで、多くの人を救ってきた。
「生き難い世の中ですが、現実からは逃れられない。それでも逃げてしまいたくなる。そんな時代なのでしょうね、今は。」
記憶をザッと確認してから、百鬼夜行の記憶を消去。
「生き残りに協力者は居ません。目を覚ます前に全員、新宿中央公園へ運び込みましょう。」
新宿御苑は有料だが、新宿中央公園は無料。記憶が飛ぶまで飲んで、気が付いたら公園で寝ていた。という事にすれば良い。
「鼠取りの状況は。」
「大きいのが三匹、掛かっています。」
キリッ。
「・・・・・・それってドウなの。」
「ですよね。」
三稜草と諸且が見合い、フゥと息を吐く。
職場の天井裏で鼠ん運動会、開催チュウ。
「御狐サマに捧げ、サクサク送って頂こう。」
「はい、室長。」
新宿中央公園がある場所は、嘗て熊野神社の杜だった。因って役所屋上の社から、木立の中に物を送る事が出来る。
勿論、守衛妖狐へ貢物を捧げるのを忘れてはイケナイ。
新宿の妖怪対策室は旧館内にあるので、控え目に言って襤褸い。机の引き出しに菓子を入れたまま帰宅すると、かなりの確率で齧られマス。
「ねぇハラスー。」
「なぁに、朱里。」
「連行されたヤツら、旅行者だったよね。ナンデあの半魔、何度も入国できたんだろう。」
「分からない。けど国内、都内に隠れ家があるのかも。」
「妖怪出入国記録を調べよう。」
「霞が関だね。」
人間と同じように入国しても、必ず妖力探知機に引っ掛かる。その妖力は記録され、霞が関に自動転送されるので誤魔化せない。
霞が関離宮の地下に入れるのは、隠り世認定企業の正職員のみ。出入国記録を閲覧できるのは神、神使、代表者である長、その同伴者。
「鳴海社の神使、ハラスーです。妖怪出入国記録を見せてください。」
キリリ。
「一九屋の丁稚、朱里です。」
職員証を兼ねている、鳴海守を提示してニコリ。
鳴海守は鳴海社の境内に植えられている藤の蔓、葉、花、莢から作られた特別製。
横3㎝、縦5㎝。通し番号つき契約者限定、譲渡不可の逸品。所有者を害そうとする存在を捕縛し、外部との接触を遮断する。
社務所で授けられる御守り、『鳴海社守袋』や『鳴海社守札』とは別物。




