1-11 一致しました
立ったまま作業していた諸且が椅子を引き、ポスンと座ってマウスをカチカチ。
「一致しました。添付されていた闇はオハイオ州出身、デズモンド・リッパー三十五歳。前科三犯と一致。この男、エクソシストの末裔です。」
「何をヤラカシタんだ。」
室長、三稜草が問うた。
「初犯は歌舞伎町、再犯は秋葉原で女性従業員を暴行。累犯は先日の百鬼夜行で、複数の女性を暴行。何れも死体が無いため、こちらに。」
「確信犯か。で、仕置したのは。」
「後来屋と野晒組です。ん、何でコイツ生きてんだ。」
と言いながらスクロール。
野晒組は江戸時代中期創業の老舗。
道聴寺系列だが、念仏を唱える事はない。心臓を抜き取り、握り潰して始末する。
『依頼主が子なら金子を取らず、的の所持金を根こそぎ奪う』『的が被っても頂くモノは頂く』『シッカリと裏取りし、偽りが有れば依頼者を消す』事で有名。
「あぁ、半妖か。」
諸且が言い捨てた。
「光闇さん確か、これから佐吉サンに会うと言って出たな。」
「はい。後来屋は厲嚮寺系列、野晒組は道聴寺系列。『お茶でも飲むのかな』と思いましたが。」
「デズモンド・リッパーは一体、何の混血だ。」
「狼男です。『月を見ても狼に変身シナイが、内面は邪悪で色魔』と有ります。」
「最悪じゃないか。」
三稜草が頭を抱える。
後来屋も野晒組も、的をキッチリ仕置した。なのにデズモンドは生きている。心臓が止まっても、抜き取られても死なない理由は一つ。
「不死身の半妖となると『悪太郎』『一九屋』『歯臼上等』『もつ屋』の四社に依頼するしかアリマセンね。」
「悪太郎サンと一九屋サンは、受けてくださるでしょう。けれど・・・・・・。」
「そうだな。浄化能力を持つのは、どちらも裏方。いや、裏ボスか。」
清掃屋『悪太郎』は裏、長は鴉塟。表は奥多摩にある古刹、窆氶寺の住職。引退した死神でもある。
仕置屋『一九屋』は裏、長は浦見。表は鳴海社の主神で、強い浄化能力と神通力を合わせ持つ。
裏取屋『歯臼上等』は裏、長は骨喰。表は憑払社の主神だが、大家命令で神様になったダケ。
祠の司、螢は御隠れ遊ばした螢火神より、『祓い』『清め』『標』の力を賜った元、使わしめ。憑払社の大家で、歯臼上等の裏ボスでもある。
仕置屋『もつ屋』は裏、長は餅田。表は月乃社の主神だが、裏方に徹する社の司、燃旗には頭が上がらない。
燃旗は八幡村にあった『八幡社』の巫の娘として誕生。イロイロあって鬼と人から崇拝され、清めの力を得たが神では無い。
「私からも、お願いしてみましょう。」
青白がニッコリ微笑んだ。




